三井住友トラストホールディングス傘下の日興アセットマネジメントの利益相反疑惑を報じた『疑惑の投信』について、みずほフィナンシャルグループの資産運用会社、アセットマネジメントOneの杉原規之社長がダイヤモンド編集部の取材に、「開示の内容を充実していくことが必要」と私見を述べた。疑惑の投信は、新NISAの導入など資産運用立国に向けた取り組みに水を差しかねない。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
若い世代に資産運用の世界を知ってもらう
ファンドマネジャーを「なりたい職業」に
――新NISA(少額投資非課税制度)が今年1月に始まるなど、「資産運用立国」に向けた動きが本格始動しました。これまでの取り組みを、どう評価していますか。
岸田政権で「資産所得倍増プラン」や「コーポレートガバナンス改革」が進められ、最後のピースとして資産運用立国があると理解しています。一連の流れをポジティブに捉えていますし、首相が代わったとしても引き続き官民で連携しながら推進していきたい。
資産運用立国の実現に対する期待値は、海外投資家を中心に高まっていると思います。特に新NISAは、若年層に対して資産運用の世界への関心を高めた意味で特筆すべき成果です。
当社は「未来をはぐくむ研究所」を新たに立ち上げました。運用会社と聞くと、どうしても「個別の商品をセールスされるんじゃないか」と思われるかもしれませんが、資産運用の理解を深める取り組みを担っていきたいからです。
例えば今年、子ども向けアプリの「キッザニア オンラインカレッジ」で、ファンドマネジャーの仕事を学べるコンテンツの提供を始めました。資産を運用するファンドマネジャーの仕事は、ほとんど知られていない。ゲーム感覚で仕事を知ってもらい、いずれ「なりたい職業ランキング」にランクインする時代が来たらいい。
子どもたちの親世代にも、資産運用について知ってもらいたい。大学生にも講義しているのですが、運用会社には投資家としての立場もあり、投資先企業が成長することで社会課題を解決できるという話をすると、学生たちは食いついてきます。投資は「ギャンブルみたい」と一歩引く人も多いですが、Z世代の感性は変わってきているのかもしれません。
杉原規之社長が指摘するように、新NISAが始動し、資産運用に対する国民の意識は高まった。運用業界とすれば好機といえるが、そうした流れに水を差しかねないのが、日興アセットマネジメントの問題だ。杉原氏はこれをどう見ているのか。次ページで聞いた。