残暑の時期でも
冷やし過ぎにはご注意を

「ひや(常温)」で「おろす(出荷する)」酒がうまいこの時期。しかし、実際にはまだまだ残暑が厳しいこともあり、「ひやおろし」だからといって常温で飲まなければいけない道理はない(むしろ、ちゃんと冷暗所で保管すべき)。

 要は「ひやおろし」にしろ「秋あがり」にしろ、これらは日本酒がうまい季節の訪れを知らせるサインと受け止めるのが風情であり、キリリと冷やして飲むのもおすすめだ。ただし、そこで気を付けてほしいのが、何でもかんでも冷やせばいいわけではないということだ。

 一般的に冷酒の適正温度は5~10度あたりとされ、冷蔵庫で管理されていればたいていこの温度帯に落ち着くことになる。

 冷酒の魅力は、日本酒が持つ独特のクセやアルコール臭、甘みなどを抑制してくれることにあり、文字通り爽やかに味わえる。

 原料の酒米をきれいに磨いて仕込んだ吟醸酒や、近年流行りの発泡タイプの日本酒は、冷やすことでよりスッキリした呑み口を楽しむことができるはずだ。

 しかし吟醸酒の場合、過剰に冷やし過ぎてしまうと、せっかくの吟醸香が抑えられてしまうので注意してほしい。もちろん、酒は嗜好品だから思い思いに楽しむのが一番なのだが、温度帯にほんの少し気を使うだけで、その酒のポテンシャルを最大限に味わうことができることを知っておきたい。

「日本酒、冷やでください」「常温でよろしいですか?」「いや、だから冷やで!」不毛なやりとりが生じる理由秋は酒屋の店頭が賑やかで楽しい季節でもある Photo by Satoshi Tomokiyo