「あなたの会社はZ世代に嫌がられるような採用活動をしていませんか?」――そう語るのは、ワンキャリア取締役の北野唯我さん。「常に人手不足」「認知度が低い」「内定を辞退されてしまう」「外資系との給与差が開いている」といった多くの採用担当者、経営者の悩みを解決するため、北野さんが執筆したのが、著書『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』です。これまで属人的で全体像が見えなかった採用活動を構造化し、3000社以上の企業の採用支援実績、180万人の求職者のデータに基づいた「新しい採用手法」を紹介した一冊です。この記事では、本書より一部を抜粋・編集して紹介します。
「事業サイクル」は長いか短いか、「産業の歴史」は新しいか古いか
自社のための戦略を立てる前に、必ずおさえておきたいことがある。
自社の事業特性を客観的に分析した上で、採用戦略を立てることだ。
そもそも採用を行う究極の目的は「事業成長」、すなわち自社の事業を成長させ、ミッションやビジョンを実現させることである。そのためには自社の事業特性に合った人材(=活躍しやすい人材)を採用しなければならない。採用して終わりではなく、定着し活躍してもらうことが本質だからだ。
では、具体的に考慮すべき自社の事業特性とは何だろうか。それは、「事業サイクル」と「産業の歴史」である。
まず事業サイクルで具体的に考えるのは、「事業サイクルが長いか短いか」だ。
ひとつの事業サイクルが数年~数十年のものは長く、数日や数ヵ月以内のものは短い。たとえば、電力事業や建設業といった大型の投資を伴う事業は、事業サイクルが長い。一方で、コンサルティングサービスや人材紹介業、生鮮品中心の小売業といった事業は、事業サイクルが短い。
次に「産業の歴史は新しいか古いか」で分類できる。新旧の判断は現役の労働世代よりも長い歴史がある場合は古く、短い場合は新しいと判断する。
たとえば、スマートフォンをベースにしたIT・WEBサービスを手掛ける多くの企業は、新しい産業に分類される。一方で、自動車業界は既に創業者が亡くなっている企業も多い(=現役世代がバトンを受け継いでいる)ため、古い産業に分類される。
「若手を速いスピードで登用する」が全ての会社に向いているわけではない
この「事業サイクル」と「産業の歴史」によって、自社の人事ポリシーの大まかな最適解や選択肢が決まる。産業の歴史が長ければ長いほど、当然、経験者が自社や労働市場の中に存在していることになる。言い換えれば、経験者採用を中心に事業をつくることができる。一方で、産業の歴史が浅ければ浅いほど、労働市場に経験者が少なく、入社後の育成をベースにした人事戦略を取らざるをえない。
さらに、この2つの要素によって、採用すべき人材のスキルや要件も変わる。
具体的には、事業サイクルが長ければ長いほど、一人の人材が事業の全体像を理解するためにかかる期間や費用が大きくなる。求められるスキルや経験も細分化されていくことが多く、雇用の長期安定性が必要になりやすい。
一方で、事業サイクルが短い場合、年齢に関係なく事業の全体像を理解するチャンスが多い。そのため、速いスピードでの評価や登用も可能になる。この違いが、採用の人材要件の差になる。
時間をかけて計画的に育てることに適した人材と、速いスピードでの評価と登用に適した人材は異なる傾向があるからだ。
(本記事は『「うちの会社にはいい人が来ない」と思ったら読む 採用の問題解決』を元に抜粋・編集したものです)
株式会社ワンキャリア 取締役 執行役員CSO
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に新卒で博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。米国・台湾留学後、外資系コンサルティングファームを経て、2016年ワンキャリアに参画、現在取締役 執行役員CSO。作家としても活動し、デビュー作『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』(ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版)など、著作の累計部数は40万部を超える。
ワンキャリアは2021年10月、東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)に上場。累計3000社以上の企業の採用支援実績があり、累計180万人の求職者に利用されてきた。新卒採用領域の採用プラットフォーム「ONE CAREER」は2020年から4年連続で日本で2番目に学生から支持され、東京大学、京都大学の学生の利用率は95%となっている。