「小学5年生の娘にほしいとせがまれて買いました」
そんな感想が寄せられているのが、「すごい」と「やばい」の両面から日本史の人物の魅力に迫った『東大教授がおしえる やばい日本史』です。本書の監修をつとめた東京大学史料編纂所教授の本郷和人先生によると、学校の歴史の授業で出てくる「すごい」偉人たちも、実はものすごい失敗をしたり、へんな行動をしたりした「やばい」記録がたくさん残っているそうです。
今回は、大垣書店麻布台ヒルズ店(東京・港区)で8月に開催された、本郷先生のご登壇イベント「親子で歴史がもっと好きになる『やばい日本史』夏休み特別授業」(ダイヤモンド社「The Salon」主催)の模様をダイジェストでお届けいたします。
(構成/ダイヤモンド社コンテンツビジネス部)
ペリーの黒船来航は「宇宙船襲来」レベルの衝撃
――幕末から明治維新にかけて、日本は激動の時代を迎えます。この時期に歴史が大きく動いた要因は何だったのでしょうか?
本郷和人(以下、本郷) 僕は、明治維新が起こったそもそもの原因は「ペリーの黒船来航」だと考えています。
これは、当時の人からすると、とんでもなく衝撃的な出来事でした。今の時代にたとえると、「宇宙船がやって来た」というレベルです。
――なんと! それほど大きなインパクトがあったんですね。
本郷 ペリーが乗っていた蒸気船は、当時のアメリカが誇る最新鋭の戦艦でしたからね。それを見た日本人は、腰が抜けるほど驚いて、「とてもじゃないけど敵わない」とすぐに悟ったはずです。
そして、「徳川幕府のままでは、日本が植民地になってしまう」という恐怖を感じたので、新しい政治のかたちをつくろうという動きが急激に活発化したわけです。
――つまり、黒船来航という「外的な要因」で、日本は変革を余儀なくされたんですね。
本郷 そういうことです。
西郷隆盛は○○が理由で犬を飼った
――そんな時代に名を挙げた人物の1人が、西郷隆盛です。西郷にまつわる面白い逸話は何かありますか?
本郷 『東大教授がおしえる やばい日本史』でも紹介した、「太りすぎ」のエピソードですね。
明治維新を経て、戦争から政治の時代になると、西郷の活躍の場は少なくなりました。そして、ヒマになった西郷はどんどん太ってしまい、医者から「このままだと太りすぎで死ぬから、ダイエットのために犬を飼いなさい」とアドバイスされたんです。
その忠告に従って飼いはじめたのが、東京・上野公園の西郷の銅像が連れているあの犬だという話です。
――なるほど。「犬の散歩」で健康になろうということですね。
本郷 一方で、西郷には「謎の人物」としての一面もあって、たとえば彼の本当の顔はいまだにわかっていません。彼の有名な肖像画がありますが、あれは本人の顔ではなく、弟・西郷従道の顔と、従弟・大山巌の顔を合成して描かれたものなんです。
――写真は残っていないんですか?
本郷 残っていません。西郷は大の写真ぎらいだったからです。
――『東大教授がおしえる さらに!やばい日本史』にもありましたが、その西郷に自分の「盛れた写真」を送りつけたのが、大久保利通なんですよね。
本郷 そうなんです。立派なヒゲをたくわえていた大久保利通は、自分のことを「いい男だ」と思っていたようで、写真を撮ってもらうのが大好きでした。
なので、西郷に自分の写真を送って自慢したわけですが、西郷からは「そういうのはみっともない」「男は顔じゃない」という冷たい返事が来たそうです。
ちなみに大久保は、日本の将来像を明確に見据えていた、とても頭のいい人物でした。その点でいうと、彼が暗殺されてしまったのは、日本にとって大きな損失だった気がしますね。