あなたが普段飲んでいるその薬は、なぜ症状をやわらげるのか?「薬」の奥深き世界を、元製薬会社研究員の著者が超わかりやすく解説した本『「なぜ薬が効くのか?」を超わかりやすく説明してみた』が刊行された。胃腸薬や風邪薬、抗うつ薬、睡眠薬、そして抗がん剤に至るまで、さまざまな薬のメカニズムを知識ゼロからでも楽しく理解できる一冊だ。本書の刊行を記念して、その一部を抜粋して紹介する。今回は、下痢が起きる理由と「下痢止め薬」を飲む際の注意点について。
下痢が起きる理由
下痢止めの薬としては、ドラッグストアなどで手に入る「ストッパ下痢止めEX(ライオン)」などが有名ですよね。
では、そもそも下痢はなぜ起こるのでしょうか?
通常、便は次のような過程でつくられます。
小腸で食物の消化・吸収が行なわれた後、吸収されなかったものは大腸に運ばれます。これは、最初は液状なのですが、腸管の運動によって運ばれていくうちに、便から大腸に水分が吸収されて固まっていきます。そして最終的に、便は固まった状態になって排泄されます。
しかし、暴飲暴食をすると、下痢になってしまうことがありますよね。大量の飲食物により、便を押し出すための腸管の運動が活発になり、便の水分が大腸に充分に吸収される前に排泄されてしまうのです。この際、水分を摂取し過ぎていると、そもそも便に含まれる水分量が増えているため、いっそう便が固まらなくなってしまいます。
「止めるとまずい下痢」もある
他にも、お腹の風邪や食中毒の原因になる細菌・ウイルスが体内に侵入してしまうと、下痢が起こります。
このときは、腸管内の水分量が増していきます。腸に炎症が起きて腸管の壁から液体が滲出したり(滲出液)、便を滑らかにする水分(正確には粘液)が大量に分泌されたりするからです。さらに、腸に炎症が起こると便から腸管への水分の吸収にも障害が起こります。これらの理由から、便が固まらなくなってしまうのです。
なお、下痢止めを服用する上で注意しなくてはならないことがあります。下痢は、速やかに有害な細菌やウイルスなどを体外へ排出する体の防御反応でもあります。原因によっては、下痢を止めるのが最善ではない場合があります。
(本記事は、『「なぜ薬が効くのか?」を超わかりやすく説明してみた』(山口悟著)の一部を抜粋・編集したものです)