人体の構造は、美しくてよくできている――。外科医けいゆうとして、ブログ累計1300万PV超、X(旧Twitter)(外科医けいゆう)アカウント10万人超のフォロワーを持つ著者が、人体の知識、医学の偉人の物語、ウイルスや細菌の発見やワクチン開発のエピソード、現代医療にまつわる意外な常識などを紹介し、人体の面白さ、医学の奥深さを伝える『すばらしい人体』。坂井建雄氏(解剖学者、順天堂大学教授)から「まだまだ人体は謎だらけである。本書は、人体と医学についてのさまざまな知見について、魅力的な話題を提供しながら読者を奥深い世界へと導く」と絶賛されている。今回は、「山本先生、人体や医学のことを教えてください」をテーマに、弊社の新人編集者による著者インタビューをお届けする。取材・構成/菱沼美咲(ダイヤモンド社書籍編集局)。
薬を多く出す医師の真相
――「薬をたくさん出す医師にはかからないほうがよい」という噂を聞くのですが、それって本当なのでしょうか。
山本健人氏(以下、山本) 薬をたくさん出す医師がすべてよくないと言い切るのは難しいです。実際、たくさんの薬を飲まないといけない病気もあるので、その病気が要因で薬の種類が多いというパターンがあります。
また、ある薬を飲まないといけない人と飲まなくてもいい人を白黒はっきり区別できない場合が実は多いです。要するに、ある症状に対して、「薬を飲んだ方がいい」寄りの医師と、「飲まなくてもいい」寄りの医師がいて、薬を処方するべきかグレーな領域があるということです。「薬を出して効果を見て必要なかったらやめよう」という側と、「薬はどうしても必要になってから出そう」という側、どっちが正解というわけではないケースがあるんですね。なので、各医師の考え方によって薬の出し方が異なるため、たくさん薬を出す医師が悪いとは言い切れません。
たくさんの薬を飲むことになってしまう理由
――医師が悪いのではないとすると、問題はどこにあるのでしょうか。
山本 ポリファーマシーという問題があります。ポリは「たくさんの」、ファーマシーは「薬」という意味で、ポリファーマシーは飲む薬が多すぎることで生じるデメリットを指しています。
よくあるのが、色々な医療機関から薬が処方された結果、必要以上にたくさんの量の薬を飲むことになってしまったケースです。患者さんご本人が悪いのではなく、医療者側で「他のクリニックでこういう薬を飲んでいるから、これは飲まなくてもいいね」という判断がうまくいっていないときに、この問題が起こります。
――ポリファーマシーにならないために心掛けることはありますか?
山本 解決策としては、2つあります。1つは、かかりつけ医に「おくすり手帳」を見せることです。いま飲んでいる薬の中で、重複している薬がないか、本当にこんなにたくさんの薬が必要なのかということを、信頼できるかかりつけ医と一緒にチェックするのがよいでしょう。
もう1つは、かかりつけ薬局をつくることです。いろいろな医療機関にかかっている人でも、同じ薬局で薬をもらうようにすると、重複する薬の確認が行えます。
――自分で「これは飲まなくていい」など判断するのではなく、必ず医師や薬剤師に相談する必要があるということですね。
山本 そういうことです。自己判断で薬をやめてしまうのは危険ですよ。やめてはいけない薬をやめてしまっているかもしれないからです。
それから、最終的に薬をやめていいかどうかの判断は、その薬を処方している医師にしてもらいましょう。医師にとっては、他の医師が必要だと思って処方している薬を「やめてもいいですよ」とは簡単には言えない。なので、「この薬、本当に飲んだ方がいいのかな」と思ったときは、薬を処方した医師に相談するのがお勧めです。
(本稿は、『すばらしい人体』の著者・山本健人氏へのインタビューをもとに構成した)