87階と92階の間に設けられた吹き抜け空間には、鋼鉄ケーブル93本で支えられた重量660トンの鉄球がぶら下がっている(下写真)。「同調質量ダンパー」と呼ばれるこの球体は、地震によって建物が移動した向きと逆方向に動いてバランスを維持しながら揺れを吸収する。

台北101の同調質量ダンパーの写真台北101の同調質量ダンパーの写真 同書より転載(zephyr_p/PIXTA) 

 ちなみに、このシステムはニューヨークのセントラル・パーク・タワー(高さ432メートル)やアイルランドのダブリンの尖塔(121メートル)にも設置されているが、台北101では吹き抜け空間で実際に見ることができる。台湾で起きたこの大地震には日本の地震防災も学ぶところが多く、今後も参考にしていきたい。

 台湾と日本列島で近年発生する地震には、フィリピン海プレートの活動という共通点がある。そのため台湾海域の地震と南海トラフ巨大地震との関連について懸念されることがある。しかし台湾と九州本島は1000キロメートル以上離れており、また南海トラフ巨大地震の発生メカニズムと異なるので、地震が誘発されるなどの直接の関係はない。

 一方、台湾近海で規模の大きな地震が起きると、琉球諸島に高い津波が襲ってくる可能性がある。台湾から沖縄地方に向かい海底が浅くなっており、津波のエネルギーが大きくなりやすいからである。よって、今後も台湾と琉球諸島の近海で起きる地震に対する警戒を行う必要がある。