正論やルールを押し付けずに「感情を動かす」には?

 相手の感情を動かすには、いくつかポイントがあります。

 まずは、協力を得たい相手の興味・関心に注意を払い、その人にとって「譲れない」価値観や対象とはどのようなものかを考えてみましょう。

 例えば、大切にしているものとして家族や尊敬する人、趣味、信念や信条、実際の経験や体験に基づいた思いなどに焦点を当ててみるのです。そして、相手の感情に働きかける質問を考えてみます。

 例えば、私が新入社員研修の講師を務める際は、「ビジネスマナーとしてこうするべき」と大上段で教えることは避けます。

 まず新入社員のみなさんに「これまで物を買ったり、サービスを受けたりした際に嫌な思いをした経験を教えてください」と尋ね、あれやこれやエピソードを挙げてもらいます。「それは嫌だね」「許せないね」と言い合ったうえで、「みなさんはこれから消費者から提供者に変わります。自分がされて嫌なことは他人にしないためにどうしたらいいでしょうか?」と問いかけます。

 人は正論や理屈だけでは動かないものです。一方で、自分がさんざん「嫌だった!」「あれは許せない!」と語ったことについては、「逆の立場で同じことはできない」という感情になります。