池田自身、自分の勉強に疑問を持たないではなかった。中学でも高校でも優秀な成績を収めているから、勉強は嫌いではない。だが、自分は「学問それ自身のために、学んで居ない」。「単調」な学校の勉強は続けられるが、深く考える力はない。池田はそのことを気にしつつも「着々勉強」し続けるのである。

 懸賞論文の準備で東大図書館にはじめて入った池田は「やはり図書館も要るものだなァ」と感心し、10日ほど執筆の時をすごした。審査の結果は当選で、賞金50円の獲得に成功する。その金は友人たちと芸者遊びで使い切った。

 こうして「勉強」を続けた池田は、卒業式で天皇から「賞品」を拝受して学生生活を終えた。恩賜の銀時計である。2番目だったという。進路は帝大法律学科出身者に無試験「特権」が設定されている司法官試補であった。将来は判事か検事になるのであろう。