「人生100年時代」になぜ
買い物難民が増加したのか?
買い物難民がここまで拡大したのには、いくつかの要因がある。
背景の1つとして挙げられるのは、75歳以上が565万8000人(同人口の31.0%)と、買い物難民全体の62.6%を占めていることである。
70代後半や80代になると、大半の人は現役時代のような収入を得られなくなり、維持経費が高いマイカーを手放す人が増える。あるいは、加齢に伴う判断力や運動機能の低下で運転そのものが難しくなり、免許証を自主返納する人も多い。厚労省は2040年に高齢者の4人に1人以上が認知症(軽度認知障害〈MCI〉を含む)になると推計しており、そもそも買い物に限らず外出そのものが難しくなっている人が増えている。
年を重ねるほど買い物難民になるリスクが高まることは当然のことではあるが、1人暮らし世帯が多くなったことも難民増加の要因だ。
3世代同居が一般的だった時代には、大半の高齢者は食料品だけでなく日用品購入を子ども世代に委ねていた。
ところが、いまや頼める家族がなく、70代後半や80代になっても自分自身で買い物に出掛けざるを得ない人が増加しているのである。
日本の高齢化スピードは速い。総務省によれば2023年9月15日現在の80歳以上人口は国民の10人に1人にあたる1259万人だ。2035年には1607万人にまで膨らむ見通しである。