3.食べ物がのどに詰まったときの対処法

西:現場でのファーストエイドが重要という意味では、食べ物がのどに詰まったときの対処も知っておいていただきたいです。窒息して時間がたってから病院に到着しても、脳へのダメージは元に戻らず我々の手ではどうにもできないことがほとんどなので。

――『いのちをまもる図鑑』の中にあった「おばあちゃんののどにアメがつまった!」という項目、怖いと思いました。私の母も、玉こんにゃくをのどに詰まらせて死にそうになったと言っていたことがあって……。

西:こんにゃくも危険ですね。そのほかに危険なものといえば、やっぱり「お餅」です。飲み込む力が落ちているお年寄りには危険な食べ物です。のどの奥にはりついてしまうと、吐き出せないんですよ。他には、チキンやトンカツなどのお肉をのどに詰まらせる方もいます。

――そうなんですね! のどに食べ物が詰まって呼吸ができなくなってから、どのくらいで吐き出せれば大丈夫ですか?

西:とにかくはやく、心臓が止まる前に解除したいところです。心臓が止まってしまったら4分で脳へダメージをきたすので、すぐに胸骨圧迫を開始し、救急車を呼んでください。

――すぐに救急車を呼んでも、4分では到着しないですもんね。家族が食べ物をのどに詰まらせたら、すぐに肩甲骨と肩甲骨の間を強めに叩いて吐き出させるのが大事ですね。

西:まず咳をさせるんです。それでも解除できない場合は叩いて物理的な刺激で、食べ物が吐き出される可能性があります。この方法は乳児からお年寄りまで共通です。

【生死を分ける】突然のケガ・病気で死なないための応急処置ベスト3『いのちをまもる図鑑』本文より イラスト:五月女ケイ子
拡大画像表示

――掃除機を口に突っ込んで吸い出そうとするのはダメですか?

西:危ないのでやめたほうがいいです。詰まっている食べ物が見えているなら別ですが、見えていないのに掃除機や手を口に突っ込むと余計に奥に異物を押し込みさらに窒息させてしまうかもしれません。

――そういう余計なことはしないで、とにかく背中をバンバン叩き続けることですね!覚えておきます。

西竜一(にし・りゅういち)
医師。公衆衛生学修士。救急科専門医。南町田病院救急科勤務。帝京大学医学部救急医学講座非常勤講師
帝京大学医学部卒業。救急医として日々あらゆる病気やケガの診察をし、災害時には被災地において医療活動を行う。救急・災害医療の知識を市民へわかりやすく伝える活動も行っている。

※本稿は、『いのちをまもる図鑑』(監修:池上彰、今泉忠明、国崎信江、西竜一 文:滝乃みわこ イラスト:五月女ケイ子、室木おすし マンガ:横山了一)に関連した書き下ろし記事です。