AIプロジェクトの真髄は、目的意識と執念

 リリース以降、「未来献立」は目標を大幅に上回るユーザー数を獲得。2023年11月には明治安田生命の「MYほけんアプリ」にAPIを提供し、味の素では初となるデジタルサービスの外販を果たした。今後はさらにBtoB展開も強化する方針だ。

「未来献立」の開発からは、AIプロジェクト成功の本質が見えてくる。勝美さんは「AIを目的化しては本末転倒。あくまで手段」と強調する。広瀬さんも「現場の課題や事業・サービスとしてやりたいことを起点に、AIをどう活用するか、という順番で考えるとうまくいく」と語る。

 着実に成果を上げる一方で、勝美さんは新規事業の厳しさも語る。

味の素 R&B企画部 CXサービス開発グループ マネージャー 勝美由香さん勝美由香さん Photo by M.S.

「『未来献立』のようにサービスインに漕ぎ着けるのは、ごくわずか。新規事業の大半は淘汰されていきます。かけられる費用も決して十分とは言えません。そこをどう守り抜くかです。『なぜやるのか』と問われて『引き継いだだけ』という姿勢では、だいたい失敗します。どれだけ自分の意思を強く持てるかです。それは、もはや執念……執念だけで生きています(笑)」

 執念が生み出した「未来献立」。勝美さんの言葉は、AIプロジェクトに限らず、あらゆる仕事に通じる真理だろう。