「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では書籍の一部を抜粋してお届けします。

親子の手Photo: Adobe Stock

「親が認知症になった」と決めつける前に確認すべきこと

 親と会話をする際には「事実」と「想像」を混ぜて考えないようにしましょう。「実際に起きていること(事実)」と「起きていないこと(想像)」を正しく切り分けないと、適切な対処ができなくなるからです。

 たとえば、親から「道がわからなくなって困った」という話をされたとします。そのような話をされたら、「とうとう認知機能に問題が出てきたのかもしれない。老人ホームに入れないとダメだ」と焦るかもしれません。

 しかし、ここでは一呼吸おいて「実際に起きていること(事実)」を確認することが大切です。

 断片的な情報だけでは、正確な状況判断ができません。たとえば「なにかトラブルが起きたの?」「家に帰れなくなったって言うけど、どこまで行ったの?」と聞くのが1つの方法です。普段行っているスーパーなのか、それとも行きなれない遠方での出来ごとなのかを確認してみましょう。

 そこで「隣の県にいる友人の家まで遊びに行こうと思っていたのよ。でも、うっかり家にスマホを置いてきちゃって。だから地図を頼りにすることもできなくてね。困ったわ」などと言われたら「認知に問題はない」と判断できますよね。

 このケースでは「道がわからなくなって困った」という断片的な事実から「認知に問題がある」という思い込み(想像)を排除しました。そして、正確な情報を聞き取ったことで焦らずにすみました。このように「事実」と「想像」を切り分けることで、歳をとった親のケアを適切に行うことができます。ぜひ、コミュニケーションに生かしてみてください。