そうすることで、いざ自分が打つときにも、失敗する姿ではなく、成功する姿を想像しやすくなり、結果的にポジティブな循環が生まれます。

 この原理を知っておくと、他人の成功を喜ぶことの意義もわかってくるのではないでしょうか。

 私の実体験としてもお伝えしたいお話があります。

 私は僧侶であるとともに空手家の顔も持っていますが、同じ道場に黒帯を取るのに16年かかった後輩Yくんがいました。

 黒帯は流派にもよりますが、私の所属している団体では、8~10年くらいで取得できるので、時間がかかったほうだといえます。

 Yくんは試合に出る仲間のためにミット打ちやアップに付き合うことを優先してしまい、自分の試合の出番を忘れてしまうくらいのお人好しでした。

 そして、同期や後輩たちがどんどん自分を追い越していくにもかかわらず、妬みの感情などを見せることなく、相手の成功を心から喜んでくれるような人でした。

 大会で良い成績を残したことはなかったのですが、「Yくんに黒帯を取らせたい」「Yくんが黒帯じゃなかったら、誰が黒帯だというんだ」――道場にいる誰もがそう思っていました。