「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では書籍の一部を抜粋してお届けします。

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老いた親の食が遅くなっている

「ちゃんとごはん食べてよ!」。食が細くなっている親を心配するひと言です。こういった不安があるときは「一過性のことなのか、なんらかの疾患が潜んでいそうなのか」をまずは鑑別しましょう。

 夏バテなどで疲労が蓄積しているときは食欲が減退しますが、そういった場合は「一過性の食欲減退」なので、さほど気にすることはありません。

 しかし、しばらく食欲がないならば、医師に相談するなどして原因を究明することが大切です。深刻な病気が隠れているかもしれません。内臓の具合が悪いのか。噛み合わせが悪いのか。精神的な不調なのか。認知症が進行しているのか。こういった可能性のなかから「親の不調」の原因を探りましょう。

 ですから、こういった場合は単刀直入に「普段、どのくらい食べているのか教えて」と聞きましょう。逆に「ちゃんと食べてよ!」と思ったことをそのまま伝えても、親は食べたくても食べられないことが多いですから、かえって状況は悪くなってしまいます。親子だからこそ、冷静に対処しましょう。

 もし「別に大したことないよ」などとはぐらかされたら「お母さんのことを大切に思っているの。だから教えてください」と伝え、再度しっかりと聞き直してください。健康問題はファクト(事実)の把握に徹するのが鉄則です。それが皆さんにしかできない親を守る行動です。