「そんなの便所の落書きですよ」
投稿の削除に後ろ向きな広報部

 SNS投稿の削除について、広報部に電話した。

「削除はお勧めしませんねー。こういう書き込みをする人物は、投稿やアカウントを削除されると、もっとエスカレートしてくるんですよ。あんまり刺激しないほうが無難です」

「それでは彼女も耐えられませんよ。我々が何とかしないと」

「目黒課長?そんなの便所の落書きですよ」

「便所?」

「昔よくあったじゃないですか。市役所とか駅のトイレに落書きが。あれと同じようなもんです。消しても消してもまた上から書かれるんです。キレイにしたらまた書く。消したらエスカレートするだけですよ。相手にしないことが最善策でしょうね」

「彼女はショックで休んでるんですよ。銀行が守ってあげなくて、誰が彼女を守れるんですか!見て見ぬふりは違うでしょう」

「『見て見ぬふり』なんて一言も言ってませんよ」

「『放っておけ』は同じことですよね」

「そんなに言うなら、削除要請はしますよ。ただ相手はX社なんで、すぐに削除してもらえるかは分かりませんけどね」

 この担当者にとって、本件の優先順位が低いことは確かだ。本部部署と現場の支店では、こうした大きな溝があちこちにある。この溝を埋めない限り、この銀行に未来はない。もちろん、現場の方を向いて頑張っている本部部署も多々あるが、一部のこうした発言が全てを台無しにしてしまう。