「口座を客に使わせてやってる」
客を見下す姿勢がカスハラを助長
苦情対応を指導する講師のセリフを紹介しよう。全店の預金担当課長がリモートで集められた研修での1コマである。
「『お客様は神様』だと思ってるんですかあ?違いますよー。全然違う。当行の口座を使わせてやっているぐらいに考えて下さい。これまでの発想を180度変えて下さいね」
「神様ではなく、対等な立場だ」と言うならまだ分かる。それを通り越して「口座を使わせてやっている」と言い出している。上からの言い方に違和感を覚えた。
「普通預金口座を開設する時、当行は手数料をいただいてますか?欧米の銀行は手数料がかかるでしょう。国内でも残高に応じて手数料を取る銀行はありますが、私たちの銀行はいただいてません。手数料は、サービスの対価としてもらうものでしょ?もらってないんですよ、うちは。だから『口座を使わせてやっている』んです」
「困った客には毅然(きぜん)と対応しなさい。もっと自信を持って対応しなさい」という対応指導で留めておけばよかったのだ。
「銀行のほうが立場は上」という発言を聞き、「この講師は身をもって苦情対応を経験したことがあるのか」と甚だ疑問に思った。いくらカスハラ防止のポスターをロビーに掲示しても、本部がお客をお客と思わず、上から見下ろす姿勢であれば、それを感じ取ったお客からのハラスメントは減らないどころか、むしろ助長しかねないだろう。
前述のXへの投稿については、支店内で対応を協議したが、最終的には広報部の意見通り、投稿は放置することになった。我が行ではこうした対応を「静観」という。