ただし、物価上昇率が低下するかどうかは分からない。

 消費者物価指数の上昇率は、依然として高止まりしている。2024年3月の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の対前年同月比は2.6%だ。これでは、経済全体の実質賃金が有意にプラスになるのは、難しい。

 また、いま生じている賃金上昇を、手放しで喜ぶわけにはいかない。そこには大きな問題がある。それは、生産性上昇との関係だ。

賃上げを実施しているのは
販売価格に転嫁できる大企業だけ

 本来、賃上げは、労働生産性の上昇によって実現するものだ。これは、資本蓄積や技術進歩によって実現する。

 OECDのデータベースにある「労働時間当たり実質GDP(自国通貨建て)」は、労働生産性を表すと解釈できる。これについて、2020年から2022年の年成長率の平均値を見ると、日本の場合は0.5%程度となっている。

 そこで、実質賃金上昇率として0.5%が可能であるとすれば、物価上昇率2%を前提として、ベア上昇率2.5%を定常的に維持できるとの見方が可能だ。定昇分は2%程度なので、春闘ベースで言えば、4.5%賃上げが可能だ。