2013年4月16日に、平成25年度予算案が衆議院を通過した。この予算案には、生活保護基準引き下げ方針によって削減された生活保護費が含まれており、5月15日、参議院において自然成立となる見通しだ。

今回は、前回に引き続き、衆議院・予算委員会での生活扶助相当消費者物価指数(生活扶助相当CPI)をめぐる議論を中心に紹介する。現政権の閣僚・厚生労働省・総務省などは、どのように認識しているのだろうか?

8月に迫る生活保護基準引き下げ
最大の根拠は「デフレによる物価下落」

 この8月から生活保護基準の引き下げが実施され、生活保護当事者に支給される生活扶助費の減額が行われる予定である。まず、生活保護基準引き下げに関する厚労省方針を確認しておこう。

 引き下げ幅や金額は、居住地・年齢・世帯構成によって異なる。これは、生活保護基準がもともと、それらの要因の影響を考慮して定められてきていることによっている。社会保障審議会・生活保護基準部会は、各要因の影響の程度が実態に即しているかどうかを検討し、2013年1月に取りまとめた報告書において、実態との間にズレがあることを指摘した。この結論は、生活保護基準引き下げに対して、「ゆがみ」の是正として反映された。結果、引き下げ額は、世帯構成等によって異なっている。なお基準部会は、ズレがあることは指摘したが、「だから引き下げるべし」という示唆を全く行なっていない。

 厚労省が試算した引き下げ額は、以下のとおりである(『生活保護制度の見直しについて』5ページ)。

 子育て中の世帯、特に「夫妻+複数の子ども」という構成の世帯で最も引き下げ額が大きく、パーセンテージでは7~8%程度にも達する。その他の世帯でも、多くは大幅な減額となる。町村部の高齢者に対しては、わずかな増額となる場合もある。これは、現在まで、地方での生活コストが実態以上に低く見積もられていたことによっている。

 しかし、「ゆがみ」の是正による生活保護費減額は、ごく一部である。厚労省は、デフレによる物価下落を反映し、生活保護費を減額する方針としている(『生活保護制度の見直しについて』4ページ)。物価下落幅は、4.78%であったという。また、減額される生活保護費のうち86.6%が、物価下落を反映したものである。

 もしも、この物価下落が事実ではないとすれば? 生活保護当事者たちは、事実無根の物価下落によって、現在でも「健康で文化的な最低限度の生活」に充分とはいえない生活保護費を、さらに引き下げられることになる。