「親から相続した不要な土地」を国に返す方法、徹底解説!
人生100年時代、お金を増やすより、守る意識のほうが大切です。相続税は、1人につき1回しか発生しない税金ですが、その額は極めて大きく、無視できません。家族間のトラブルも年々増えており、相続争いの8割近くが遺産5000万円以下の「普通の家庭」で起きています。
本連載は、相続にまつわる法律や税金の基礎知識から、相続争いの裁判例や税務調査の勘所を学ぶものです。著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。相続の相談実績は5000人を超えている。大増税改革と言われている「相続贈与一体化」に完全対応の『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】 相続専門YouTuber税理士がお金のソン・トクをとことん教えます!』を出版する。遺言書、相続税、贈与税、不動産、税務調査、各種手続という観点から、相続のリアルをあますところなく伝えている。(初出:2023年10月7日。初出時より再構成いたしました)

「親から相続した不要な土地」を国に返す方法、徹底解説!【書籍オンライン編集部セレクション】Photo: Adobe Stock

親から土地を相続したけど、正直いらない…

 原野商法(げんやしょうほう)という言葉をご存じでしょうか。

 バブルの真っただ中、「今後、この土地はリゾート地として開発されるので、今のうちに買っておけば値上がりして大儲け間違いなしですよ」という(嘘の)うたい文句で、日本中の山林を高値で販売していた悪徳業者がおり、この販売手法のことを原野商法といいます。

 原野商法の被害にあわれた方で、いまだに地方の山林を所有している方や、先祖代々相続してきた山林の処分でお困りの方が世の中にはたくさんいます。皆さん「売りたいけど、買い手がつかない。タダでもいいから手放したいと役所に相談したが断られた」と、途方に暮れています。

土地にかかる相続税を甘く見てはいけない

 ちなみに、固定資産税は同じ市区町村内に所有している土地の価格の合計が30万円未満になると免税されます。そのため、地方に所有する山林に固定資産税が課税されていないケースも多々あります。だからと言って放置していいわけではありません。産業廃棄物の不法投棄や、災害による土砂崩れが起きたような場合には、所有者に責任が生ずる可能性も大いにあります。

 また、固定資産税がかからなくても、相続税は課税される点にも注意が必要です。固定資産税が免税されている土地は、固定資産税を通知する書類が届かないため、相続のときに発見されずに申告漏れになってしまうケースがあります。

 さらに注意が必要なのが、固定資産税の評価額は小さくても、相続税の評価額はそれなりに大きくなることもある点です。地方の山林は路線価がなく、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算する、倍率方式という評価方式が適用されるのですが、山林に対しては10~100倍近い倍率が適用されるため、思った以上に相続税評価額が大きくなる傾向があります。

 実際に、以前、千葉県の山林(約2400㎡)を評価したときには、固定資産税評価額は10万円だったのに対し、倍率は62倍と指定されており、相続税評価額は620万円になりました。

 不要な土地を相続した場合、一定の要件を満たすと、その土地だけ相続せずに、国庫に帰属させ
ることできる制度が、2023年4月27日から始まりました。そのポイントと注意点を見ていきましょう。