昨今、高齢者雇用が増えている傾向にあるが、彼(女)らの一部は生計を維持していくためにやむなく働いている者も少なくない。よほどの預貯金や資産収入がなければ、生活保護受給者よりも困窮することもある。

国民年金受給者の老後資金は
6000万円足りない

「老後資金2000万円不足問題」を考えると、厚生年金受給者と国民年金受給者とでは論点が大きく異なっている。

書影『介護格差』(岩波新書)『介護格差』(岩波新書)
結城康博 著

 なぜなら、先の金融庁試算モデルでは平均実収入が月約21万円とされており、夫が厚生年受給者、妻は国民年金受給者といった家計が想定されている。しかし、夫も妻も国民年金受給者であれば、2人合わせて約10~11万円の実収入にしかならず、金融庁の平均実収入より約10万円も不足するからだ。

 そうなると、毎月の不足額は5万円ではなく約15万円となり、3倍の6000万円程度の預貯金を有していないと安定した老後を送ることはできないことになってしまう。

 あくまでもモデル試算での議論であるから、例えば、老夫婦とはいえ息子や娘の仕送りがあるか否かでも状況は変わってくるため一概に論じることはできないが、いずれにしても厚生年金受給者と国民年金受給者との格差は生じてしまう。