まったく新しい
「真の論理的思考」を身につけよう
ここまで紹介した2冊は、スポーツ、芸術それぞれの分野に仮託して、「頭をどう使うか」を学べる本だった。最後に取り上げる『シン・ロジカルシンキング』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、あらゆる業種・職種で成果を上げられる、新しい「頭の使い方」の型を説く書籍だ。
ビジネスにおけるコミュニケーションや思考、意思決定には、通常、「客観性」「論理性」が求められる。きちんとしたエビデンスが必要で、単なる「思いつき」は却下されることが多い。だからこれまで、MECEやSWOT分析、5W1Hといったいろいろな「思考の型」、フレームワークが生み出され、ビジネス現場に普及してきた。
ところが問題は、「普及しすぎた」ところにある。先に挙げた、いわゆる「定番ツール」は有名すぎて、安易に使うと「そんな一般論はいらない」などと一蹴されてしまいかねないのだ。
そこで、デロイト トーマツ コンサルティングで活躍する、著者の望月安迪氏が開発、提唱するのが、新しい「思考の型」である「QADIサイクル」だ。これは、客観性や論理性だけでなく、「主観」や「情理」も重視した総合的なツールである。
問いと仮説から始まる
QADIサイクル
「演繹的思考(ディダクション)」「帰納的思考(インダクション)」「アブダクション(仮説形成)」をきっとご存じだろう。QADIサイクルでは、この3種の思考法を組み合わせる。
QADIは略語であり、「Question(問い)」「Abduction(仮説)」「Deduction(示唆)」「Induction(結論)」の頭文字を並べたものだ。まず問い(Q)を立て、それに答えるかたちで、意外性のある仮説(A)を思いつく。その仮説を敷衍(ふえん)して、どんな可能性があるかのストーリーを示唆(D)として導き出し、その正しさを検証して結論(I)を出す。ざっと、こんな流れでQADIを展開させ、繰り返し回していく。
ポイントは、問いと仮説が先にあることだ。この2つは、何かしらの前提から考えていくのではなく、何もないところから、もしくは意外な物事をヒントとして、「思いつく」。そこにはおのずと、各個人や集団によるこれまでの経験や、培った感性などが反映される。主観や情理も重視する、とはそういうことだ。
本の中では、さまざまなケースごとにQADIをどのように具体的に使っていくかも詳しく解説されている。ぜひ読んで、基本の型を身につけ、実践してみていただきたい。
3冊を読み通すことで、頭の中を秋空のようにスッキリさせてくれるとうれしい。