B課長の処遇をどうする?
(1)B課長がAら部下の新規取引先を横取りし、自らの業績とする行為は、企業内での信頼関係を損ない部下のモチベーションを下げ業務遂行に悪影響を及ぼす。
(2)(1)の行為により、本来Aらに支給されるべき報奨一時金や賞与及び人事査定のプラス待遇が得られなかった場合、B課長は部下の正当な権利を侵害したことになるばかりか、本来上記の権利がないのに不当に利益を受けたことになる。
(3)B課長は営業マンとして報奨一時金などの処遇を理解していたと思われるし、複数の部下に対して上記の行為を働いていたことから、会社側としては上記を勘案して懲戒処分を行うことも考えられる。
(4)B課長はすでに部下からの信頼をなくしており、チームとして仕事ができる状態ではない。懲戒処分とは別の問題として、他部署への配置転換(懲戒処分としての「降格」を伴うケースもある)をする必要があるだろう。
「今後、このようなことが起きないよう、どんな対処策がありますか?」
上司の仕事ぶりについて、部下から現状を聞き出す。方法は「定期的にC専務が営業課のメンバー全員と個人面談をする」「全員からアンケートを取る」などが考えられる。
(2)管理職の人事評価方法を見直す
個人の業績だけではなく、部下の業績が上がれば管理職の評価も上がるような評価基準にする。
E社労士のアドバイスを受けたC専務は、甲社長などと共に懲罰委員会を開き、B課長には不当に得た報奨一時金を会社に返済させた上、11月1日付で札幌営業所の一般社員として降格扱いにした。そしてAら報奨一時金の対象となった部下に対しては計算して支払うこととし、管理職に対する人事査定の見直しを図ることにした。
Bに代わり、君を課長に推薦したいんだけど……
10月下旬。AはC専務から「君を次期営業課長に推薦したいと思うが、どうだね?正式には来月社長を交えた管理職会議で決定するが、多分OKだろうと思うよ」と打診を受けた。
しかしAはきっぱりと断った。
「課長になれば部下のフォローに時間が取られるので、新規開拓ができません。自分はもっと営業マンとしての実績を上げたいんです。その方がやりがいもあるし、報奨一時金やボーナスアップで、課長よりも給料をたくさんもらえますから。B課長は『課長になったら給料減った』っていつもボヤいていましたよ。かわいそうに……」
「そこでB課長に同情するのか!」
C専務は、Aが去った後ガックリとうなだれた。
※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため個人名は全て仮名とし、一部を脚色しています。