「アイデアが思いつかない」「企画が通らない」「頑張っても成果が出ない」と悩む方は多くいます。その悩みを解決するために「個人のセンス」も「やみくもな努力」も必要ありません。人に認められている「優れたアイデア」から自分の脳内に「再現性のある回路」をつくればいいのです。『発想の回路 人を動かすアイデアがラクに生まれる仕組み』の著者、クリエイティブディレクター中川諒氏による「いつも結果を出す人」の秘伝の思考技術を紹介します。
限界のある「努力」に、すべてを任せない
努力には限界があります。
しかし工夫には限りがありません。
何かうまくいかなかったときに、わたしたちは「自分の努力が足りなかった」と結論づけてしまうことが多々あります。
しかし実は足りなかったのは努力ではなく、工夫の場合が多いのです。
なぜかと言うと、努力には誰しも限界があるからです。
限界のある努力に自分のすべてを任せるのは、やや無鉄砲ともいえます。
一方で、工夫は無限にできます。何かを途中で諦めてしまったときは、自分の努力する力に頼りきってしまったことが敗因です。
努力と工夫をそれぞれ図にしてみると次のようなイメージです。
努力は真っ直ぐな矢印です。人生を山登りにたとえると、山の頂上を目指すときにひとつのルートを決めて、この矢印を強く太くしていく作業が努力です。
たとえ目の前に大きな障害があったとしても、その障害を押しながら進み続けなければいけないからこそ、心理的にも体力的にも負荷がかかります。
そのような状態では、途中で登るのをやめて下山してしまうというのは十分に理解できます。そしてしばらく経ってから「あのとき努力が足りなかった」と後悔が残るのです。
一方で工夫は、くねくねと曲がりくねった矢印です。
一度選んだ道が進めそうになければ、別のルートを探して進み続けるイメージです。努力は1方向だったのに対し、工夫は360度どの方向でも道を選ぶことができます。
たまには下りるように見える道を選んでもいいのです。
障害が目の前に現れたとしても、改善、解決、解消、回避と4つの工夫を繰り返しながら、自分の進みやすいルートを進んでいくことができます。
自分の通った道は曲がりくねって美しいルートではないかもしれませんが、それは結果的に自分らしい軌跡になっているはずです。
そしてその道は、気づくと他人には登れない自分だけのルートになっています。
他人のすごい努力と自分の努力を比べなくていい
努力は他人と矢印が同じ方向を向いているために、比較が行われやすいのも特徴です。
自分よりも太くて強い努力の矢印を見つけてしまったときに、「敵わない」とその方向に自分を押し進める力を弱めてしまうのです。
音楽やスポーツなど自分の好きな世界で、「自分には才能がない」と若い頃に夢を諦めた経験のある人も少なくないはずです。
その人はきっと自分よりも強く太い矢印を目にしてしまったことで、自分の矢印を強く太くすることに限界を感じたのではないでしょうか。
努力によって生まれる矢印は確かに強くて太い。
でもそれを続けられる人はごくわずかです。
そして自分よりも太い矢印をもっている人たちは必ずどこかにいます。
努力を続けることに限界を感じたら、ぜひ方向転換して工夫をしてみてください。
いつまでも同じ方向に進み続ける必要はありません。
360度どの方向に進んでもいいと気づくことができれば、そこから見える景色は変わるはずです。
努力よりも工夫を選ぶことで、もっと軽やかに自分だけの道を歩んでいくことができます。うまくいかない状況は、工夫のチャンスです。
(本記事は中川諒著『発想の回路 人を動かすアイデアがラクに生まれる仕組み』から抜粋し、一部を改変・編集したものです)
中川 諒(なかがわ・りょう)
クリエイティブディレクター/コピーライター
1988年生まれ。幼少期をエジプトとドイツで過ごす。慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、2011年に電通に入社するも希望のクリエイティブ局には配属されず、自主制作をはじめる。2017年、「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」のU30プログラム「ヤングライオンズ」の国内予選を150組を超える出場者の中から1位で勝ち抜き、日本代表に選ばれる。2018年、TCC(東京コピーライターズクラブ)新人賞を受賞し、社内の転局試験に合格。営業から念願のクリエイティブ局に異動。同年カンヌライオンズのアジア大会「ヤングスパイクス」本戦で1位を獲得。2019年、Googleにクリエイティブディレクターとして出向し、シンガポールとオーストラリア・シドニーで勤務。帰任後、ユニクロ、コカ・コーラ、サントリーなどの広告を制作。2023年よりアクセンチュア ソングのクリエイティブエージェンシーDroga5に所属。著書に『発想の回路 人を動かすアイデアがラクに生まれる仕組み』(ダイヤモンド社)『いくつになっても恥をかける人になる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。「恥研究家」としても活動。
Twitter/Instagram:@ryonotrio
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◎【今すぐ「おもしろい」を生み出す10の回路】+【工夫の「4K思考マップ」】付き!
「アイデアが思いつかない」
「企画が通らない」
「頑張っても成果が出ない」
このように悩んだことはないでしょうか。
「アイデアはいいけど、企画になっていないね」
そう言われた経験がある人は、本書を読んで「発想の回路」を身につけることで、他人も納得する企画を生み出すことができるようになります。
「コンテンツ企画」や「商品企画」「事業企画」「広告企画」という仕事があるように「企画」は多くの会社で必要とされる職能です。
にもかかわらず、学校では誰も「企画」を教わっていません。
社会人になって企画部署に配属された途端、プロとして企画をする必要がある。
実は企画という職能はとても特殊な環境におかれています。
わたしは新卒で広告代理店に入社し、クリエイティブを希望していました。
しかし入社してから7年もの間、その夢は叶いませんでした。
入社直後に受けた「クリエイティブテスト」で落ちてしまったからです。
いくらアイデア本を読んでも、具体的にどうしたらアイデアが出せるようになるのかは分かりませんでした。
それからは、どうすれば人を動かす企画ができるようになるのかを、ただひたすらに考えて試し続けました。気づけば7年もの月日が経っていました。
その中で気づいたのは「アイデア」や「企画」で結果を出すためには、個人のセンスに頼ってやみくもに努力するのではなく、人に認められた優れたアイデアから自分の脳内に再現性のある「回路」をつくる必要があるということです。
才能なしと見なされていたわたしが、自分なりの「回路」をつくった翌年、コピーライターの登竜門と呼ばれるTCC(東京コピーライターズクラブ)新人賞を受賞し、アジア最大級の国際広告賞の若手部門で世界一位になったのです。
この本では、わたしが「発想力」を発揮するために、何をどうやってインプットし、アイデアを出して、企画を立てているのかを順序立てて説明しています。また仕事で出会った多くのクリエイターたちの思考や技術も参考に、誰でも再現可能な思考術として体系的にまとめました。
広告業界だけでなくどのような業種であっても、商品や事業開発などアイデアや企画が必要な人が実践できるように整理しています。
この本を読んだ人が、無駄な努力をしなくて済むように。
そして自分には才能がないと、自分の好きなことを諦めなくて済むように。
アイデアのつくり方、企画の立て方だけでなく、人生においてもどのように工夫すればいいのか、なるべく具体例を交えながら書いています。
【本書の内容】
1章 なぜ「アイデアはいいけど、企画になっていない」のか?
● 「アイデアが出ない」と言う人が勘違いしていること
●アイデアは閃きではなく工夫からはじまる
●企画をつくる5つのプロセス
●アイデアと企画の違い
● 「いい企画」の条件
●アイデアを企画に変える「発想の回路」
2章 アイデアは工夫からはじまる―工夫の4K―
●どこからアイデアを考えればいいのか分からない
●4つのアイデアがすぐに生まれる「工夫の4K」
●工夫の「4K思考マップ」でアイデアを出す
●アイデアが出ないときに試す5つのスイッチ
●ユニークなアイデアをつくる2つの鍵
3章 アイデアを「企画」にする―発想の回路―
●他人が「おもしろい」と感じて、アイデアは企画になる
● 「発想の回路」が生まれたきっかけ
● 「発想の回路」がある人とない人の違い
●今すぐ「おもしろい」をつくれる10の回路
4章 あなたの仕事で使えるオリジナルの「回路」をつくる
●評価される「おもしろい」の基準を知る
●自分の仕事に直結する、オリジナルの発想の回路をつくる
●つくった回路を試してみる
●回路は通電不順を見つけるのに役出つ
5章 発想体質のつくり方
●センスは磨くもの
●①自分の鮮度を意識する
●②アイデアは表現しないと妄想で終わる
●③自分を妨げる「恥」と向き合う
●④ 「デモ星人」「イイネ星人」「ナンデ星人」との付き合い方
●⑤ 「何かやろうよ」は受け身だということを理解する
●⑥うまくいっていないことこそ「アイデアの宝庫」
●⑦ひとつのことに集中してはいけない
●⑧飽きは創造の入口
●⑨自分の興味のエンジンを刺激する
●⑩「行動の企画化」で習慣化させる
●⑪「タスク」ではなく「プロジェクト」と捉える
6章 工夫は自分の未来を変えるチカラ
●小さな工夫が「予想もできない未来」にあなたを連れていく
●工夫があなたのキャリアをつくる
●努力は有限、工夫は無限
●どんな小さな工夫も立派なアイデアだ
●発想力は周りから評価されにくい
● 「ビッグアイデア」という功罪
●工夫はあなただけのタイムマシーンだ