ビルの下を道路が通る。ありそうでなかった新しい形態だ

 道路の真上に超高層ビルを建てる──。日本で初となる画期的な土地利用方法が不動産業界で話題を呼んでいる。

 大阪市が3月に承認した阪神百貨店梅田本店と新阪急ビルの建て替え計画。実はこの二つのビルは幅員約20メートルの市道を挟んで立っており、計画では市道を高さ5.5メートルのトンネル状にして残し、一つの超高層ビルに建て替えるというものだ。

 2011年に改正された都市再生特別措置法に基づく特例で、大都市の指定された区域では、道路をまたいだ形態のビルの建設を認めるもの。「保守本流でプライドの高い(国土交通省)建設局が折れた」(大手不動産会社幹部)とされている。

 なぜこれが画期的なのか。都市の再開発でデベロッパーが頭を悩ませるものの一つに道路がある。

 例えば東京でも、銀座や日本橋などでは、メインストリートから少し奥に入ると、細かな道路が入り組んでいる。あまり使われていなければ、自治体や国と相談の上で廃道にしたり、道路を付け替えるなどの措置を取る。

 三越銀座店の増床(10年完成)や松坂屋銀座店一帯の再開発(17年完成予定)などが実例だ。また、日比谷公園前の旧三井住友銀行本店と三信ビルの再開発も、現在この方式で検討が進められている。

 しかし、廃道の手続きは地元の反発があったり、行政の許可が下りにくいなどのデメリットがある。また、利用価値の高い道路の場合は、廃道にはできない。

 デベロッパー側からすれば、なるべくフロア面積の広いビルを造ったほうが経済効率がいいのだが、道路の存在が立ちはだかって、再開発自体を諦めていたケースも少なくない。

 大阪で先例ができたことで、今後は、東京などでもこの特例の利用に弾みがつくことが予想される。何より大規模な再開発促進の切り札として、不動産業界ではひそかな期待も高まっているのだ。

 (「週刊ダイヤモンド」編集部 津本朋子)

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