30歳のときにはすでに「62歳でこの会社を退職する」と決断し、妻とともに貯金を開始。50代後半を迎えた頃には、いつ退職しても大丈夫なほど、貯蓄が積み上がっていました。老後の資金の不安が解消されると、ローレンスは「もう仕事をしなくてもいいかな」と思うようになり、当初の予定よりも2年早い60歳で退職することにしました。

 退職後、ローレンスは妻とともに息子の家族が住んでいる町に引っ越すことにしました。そこは退職前に住んでいた町から1000マイル(約1600km)も離れていて、知っている人は誰もいませんでしたが、孫を溺愛していた夫妻は、どうしても孫の近くに住みたいと思い、新しい町でセカンドライフを送ることにしたのです。

 引っ越した後、ローレンスは妻と一緒にひたすら息子家族の家と自宅を往復するだけの生活を繰り返しました。コミュニティーの行事に参加することもなく、教会に行くこともなく、社交クラブに参加することもなく、周りとは断絶した生活を送っていました。単調な毎日が続く中、やがてローレンスは暇を持て余し、妻と二人で頻繁にお酒を飲むようになりました。

 そんなとき、事件が起きました。退職してから数カ月後、息子が離婚することになったのです。すると、息子の元妻は、「もう子どもの世話をしてくれなくても結構。私の子どもに一切、関わらないでちょうだい」と言い放ちました。

 ローレンスにとっては青天の霹靂(へきれき)でした。やることが全くなくなってしまうと、妻とともにますますお酒で気を紛らわせるようになりました。そしてついには、夫妻そろって重度のアルコール依存症に陥ってしまったのです。

退職後幸せに過ごす鍵は
「人間関係」の構築にある

佐藤 ローレンスは「幸せなセカンドライフを送るための4つのステップ」のうち、どの段階で失敗してしまったと思いますか。

アマービレ ローレンスは(1)いつ退職するかを決める、(2)仕事から自分を切り離す、の2つは、とてもうまくやり遂げたと思います。退職後のファイナンシャルプランを完璧に練り、十分なお金を貯めた後に、ほぼ予定通りの年齢で退職しました。ところが、(3)自分に合ったリタイア生活を構築する、の段階でつまずいてしまったのです。