「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノート』が発刊されました。本記事では著者の萩原礼紀によるオリジナル記事をお届けします。
高齢の親の心ない一言にイラっ
――高齢の親に心ない言葉を言われてイラッとしたというケースが多いと耳にします。それは具体的にどのようなシーンで見られるのでしょうか。
萩原礼紀(以下、萩原):たしかに多いですよね。よく聞くケースだと、子どもが手料理を振る舞ったときなどに多い印象があります。
たとえば、帰省した際に「高齢の親が台所に立つのは大変だろう」と、子どもが一生懸命料理をして振る舞ったら、「口に合わない!」と言われてしまい傷ついたというものです。
――気持ちのいいものではないですね。
萩原:そうですよね。ただ、この問題には2つのポイントが実は隠されています。1つ目は加齢による味覚の変化が親には起きているということ。2つ目は発言そのものに親は悪気がないことです。
1つ目は現役世代の私たちにとって、なかなかイメージしづらいかと多いますが、高齢になると味覚が変化することがあります。それは単純に加齢によるものであったり、薬の副作用であったり、理由はまちまちです。
そのため、私たちにとっては普通の味付けだったとしても、高齢の親にとっては濃く感じてしまうことがあるのです。
――たしかに。あまりイメージできていませんでした。
萩原:2つ目のポイントは「親は自分の発言を悪いと思っていない」ということです。正直に言えば、こういったケースでは「つくってくれてありがとう」と、まずは言ってほしいというのが誰もが思うことでしょうし、私もまったくの同意見です。
ですが、血のつながった親子であるがゆえに、そういった感謝の言葉は省略され、かつ、思ったことをそのまま親が発してしまうことはよくあります。もしくは、親としても面と向かってお礼を言うのが照れくさいということもあります。
――むずかしい問題ですね。
萩原:そうですね。子どもからしたら手間ひまかけて一生懸命つくったわけですから、いずれにしても強い言い方をされるのは嫌でしょう。
とはいえ、そこで「だったら好きにすれば!」と怒っても事態は悪化するばかりです。親は自分に原因があるとは思っていないですから、「なんで急に怒るの?」とケンカがはじまってしまいます。
ですから、そういった場合は一度冷静になることが重要です。そのうえで、「次から薄味にするから自分で調整してね」と伝えましょう。料理をつくったうえで、このようなことを言わないといけないのは苦しい部分もあるかと思いますが、こちらがある程度譲歩しなければいけないところもあります。
「次回の対応」を伝えれば、十分親の言葉には対応していると言えますから、冷静になってこの言葉を伝えましょう。
親としても皆さんが料理してくれること自体には感謝をしていますから、こちらが譲れば「言いすぎたな」と自分の発言に気がつくこともあるでしょう。
いずれにしても大事なのは「怒りに身を任せず、冷静に対処すること」です。
――大変勉強になりました。ありがとうございました。