アメーバは中小企業のような小さな事業体ですので、リーダーは社長となり、他のメンバーにも役員のような重い責任と権限が与えられます。それで、稲盛さんは「全員重役経営」と呼んだわけです。その根底には、誰にでも無限の可能性があるという稲盛さんの人間観があります。その意味では、「アメーバ経営は人間尊重のシステム」と言ってもいいでしょう。

 稲盛さんは、「経営が厳しいとき、もっと働こうという声が社員から出てくることが大事」であり、「苦しいときに一致団結できれば強くなる」と教えています。アメーバリーダーは若いときから経営数字に強くなるだけでなく、厳しい経験を経ることでリーダーとしていかにあるべきかを体得でき、成長することもできます。その点で、アメーバ経営はリーダー、経営者を育成する仕組みでもあるのです。

目標達成率99%を記録した部署を
稲盛和夫が厳しく批判した理由

 アメーバ経営の運営は、全員で翌年の詳細な年間マスタープランを作成することから始まります。実年度が始まると、そのマスタープランをもとに、今度は全員でより詳細で具体的な月次の予定を立案し、その達成を全員で目指します。

 その立案プロセスは、「経営者の意志を従業員の意志に変える」プロセスとも言えます。予定の立案は、年間であれ、月次であれ、稲盛さんは、「トップダウンとボトムアップの融合でなければならない」と話しています。