「頭の中がごちゃごちゃしていて、思考が整理できない」「自分の考えが、なかなか相手に伝わらない」と悩んでいる人は多い。いずれも、頭に浮かんだことを整理して、言語化する力が足りないのが原因だ。
そこで今回は、2024年上半期・2023年ベストセラーランキングビジネス書部門で1位(日販/トーハン調べ)となり、「もっと早く読んでいればと後悔すらした」「ぶっ刺さりすぎて声出た」と反響を呼び続けている『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者・安達裕哉さんと、『「言葉にできる」は武器になる。』の著者・梅田悟司さんに、生成AIを賢く使って「思考を整理する方法」について語っていただいた。(構成/ダイヤモンド社コンテンツビジネス部)
生成AIを使いこなせない人の「根本的な問題点」
安達裕哉(以下、安達) 生成AIとは、いわば「言葉でプログラミングする機械」です。梅田さんはコピーライターで、私も文章を書く仕事をしており、お互いに「言葉」にはこだわりがあるので、今回は「生成AI×言葉」というテーマで話そうと思います。
そもそも生成AIといえば、2022年11月にChatGPTが公開されたタイミングで大きな注目を集めましたが、最近は一時期ほどには盛り上がっていない印象です。
梅田悟司(以下、梅田) たしかに、現在はある程度詳しい人だけが話題にしている感じでしょうか。通常に使っている方にとっては、話題が落ち着いて「幻滅期」に入っているようにも思えます。
安達 そうですね。ブームのときに何度か使ってみたものの、その後はめっきり触らなくなったという人も少なくないと思います。梅田さんの周りはいかがですか?
梅田 いま使っている人の間では、「プロンプト(※)が難しい」という意見をよく聞きますね。僕が教えている大学の学生からも、「プロンプトのコツは何ですか?」とたびたび質問されます。
しかし、「プロンプトのノウハウを学んで、何をしたいですか?」と学生に尋ねると、明確な答えが返ってこないことが多いんですよね。個人的には、そっちの方が問題だと考えています。
というのも、プロンプトの技術を学ぶ前に「自分が生成AIでやりたいこと」を見つけることが重要だからです。その言語化する力を身につけておかないと、生成AIに的確な指示を出せません。
「いい回答」を引き出せない人が知るべきこと
安達 ソフトウェア開発におけるプログラミングと、生成AIの利用におけるプロンプトとは、似たような関係にあると考えています。
ソフトウェアエンジニアの方によると、プログラミングはあくまで開発の最終段階で行う作業であって、その前の「そもそもどういうソフトを目指すか」というゴールの設計に多くの時間をかけるんだそうです。
梅田 いわゆる「要件定義」と呼ばれる仕事ですね。そこに注力しないと、良質なソフトウェアは作れないということだと思います。
安達 その通りです。これは生成AIについても同じで、「生成AIを使って何を成し遂げたいか」という目的を事前に明確にしておかないと、どんなにプロンプトを頑張っても、いい回答は出てきません。
つまり、「いい回答」の定義をせずにプロンプトを入れても、不毛なやりとりに終始してしまうんです。
「カオス状態」の頭の中を整理する方法
梅田 個人的に、プロンプトは「だらだらプロンプト」と「かっちりプロンプト」の2種類に分けて考えるといいかなと思っています。
安達 「だらだらプロンプト」と「かっちりプロンプト」という言葉は初めて聞きました。いったいどういうことでしょうか?
梅田 「かっちりプロンプト」というのは、完璧な答えを求めて、完成されたプロンプトで生成AIに指示を与えることです。しかし、入力する側が自分のやりたいこと、その方法、さらにプロンプティングの技術を理解していないと、現実的には難しいと思います。
そこで重要になるのが「だらだらプロンプト」です。文字通り、生成AIとだらだら相談しながら、ゴールへの筋道、場合によっては、ゴールそのものを言語化する作業を手助けしてもらう方法です。「このテーマについてどう思う?」「どう考えればいいと思う?」などとざっくりとした相談から始めることができます。
誰かに相談することで、明確な答えは出なくても、こんがらがっていた頭の中が整理される。そして、やりたいことが言語化される。そんな経験は、誰しも体験したことがあるはずです。
この壁打ちと同様の効果を、「だらだらプロンプト」で得ることができます。しかも、最初に「あなたは○○の専門家です」といった役割を与えておくと、明確な回答をしてくれます。本当に自分がやりたいこと・やるべきことを明確化するために、「だらだらプロンプト」を使うのは結構おすすめですね。
安達 往々にして、自分ひとりで物事を深く考えようとすると、頭の中がこんがらがって「カオス状態」になりがちです。なので、「答えを教えてくれる相手」としてだけでなく、「思考を整理してくれる相手」としても生成AIが使えるというのは、多くの人に知ってほしいですね。
(本稿は、『頭のいい人が話す前に考えていること』の著者・安達裕哉氏の対談記事です)
Books&Apps運営、企業コンサルティング
Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。大企業、中小企業あわせて1000社以上に訪問し、8000人以上のビジネスパーソンとともに仕事をする。仕事、マネジメントに関するメディア『Books&Apps』を運営する一方で、企業の現場でコンサルティング活動を行う。著書に、2024年上半期・2023年ベストセラーランキングビジネス書部門で1位(日販/トーハン調べ)となった『頭のいい人が話す前に考えていること』(ダイヤモンド社)など。