もう1つは、絶対に勝てる確証がないため、負けた場合は何の仕事をするのかということまで聞いていました。

――松井さんは還暦を目前に政界を引退されましたが、大阪都構想は実現しなかったけれども、やるべきことはやったということですか。

 それが1つの大きな理由です。それだけの大勝負を、日本で法に基づいた住民投票をやったのは我々だけですから。

 いろんな自治体で住民投票をやりますが、あれは法的拘束力がありません。法に基づいて拘束力がある住民投票をやったのは我々だけで、それを2度やりました。2度負ければ、責任を取るのは当然です。それが1つの理由です。

 都構想以外もいろんな公約を掲げましたが、大半の公約は実現できました。加えて、政治家としての原動力になっていた税金の使い方がおかしいじゃないかという怒り、役所はおかしいという怒りがなくなったことも大きいです。

――十分に変革したということですか。

 財政の経常収支比率などを見ると、大阪市の財政状況は20ある政令市の中でトップクラスまで改善しました。もう公約は実行し切ったので、民間人に戻ったほうが所得も上がりますし…。

――自民党をはじめ、70代、80代の高齢の政治家が多くいますが、59歳で政界を引退された松井さんの目にはどう映りますか。

 他に行くところがないのだなと思います。永田町以外に居場所がないのだなと…。

 そんな人たちばかりだから、永田町の常識は世間の非常識になるんです。今のカネの問題がいい例です。税金を何に使ったのかを公開するという簡単なことすらできないわけですから。