「歳をとった親が言うことを聞いてくれない」。誰もが一度はこんな経験をしているのではないでしょうか。「親がいつまでも自分のことを若いと思っている」「病院ギライがなおらない」「お酒の量が減らない」などその悩みはさまざまです。親のことを思って言ったのにもかかわらず、いつも喧嘩になってしまうのは、実は伝え方に問題があります。そんな問題を解決すべく、『歳をとった親とうまく話せる言いかえノ―ト』が発刊されました。本記事では著者である萩原礼紀氏のインタビュ―記事をお届けします。

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高齢の親と「家について相談したい」

――高齢の親を持つ人の悩みとして、「今後、親の住む場所をどうしていくか」というものがあるかと思います。なかなか切り出しづらい話題なようにも思うのですが、どのような方法があるのでしょうか。

萩原礼紀(以下、萩原):たしかに、住む場所についての相談は非常に多いです。親が元気なうちに今後のことを話しておきたいというのは誰もが思うことでしょう。

 加えて、なにかあってからでは遅いことですから、事前に話しておこうとする意識はすばらしいことだと思います。自宅近くへの引っ越しや、二世帯住宅へのリフォーム、同居など選択肢はさまざまかと思いますが、いずれにしてもいいことです。

 ただ、そういったことを親子で話し合いたいとき「この家も古いし、不便だよね。もっときれいな家に引っ越さない?」などの言い方は控えたほうがいいでしょう。

 一見すると悪くないように思えますが、この言い方には大きな見落としがあります。

 それは、「House」と「Home」の違いを意識できていないことです。「House」は建物としての家です。一方「Home」には「家族の思い出の場所」といったニュアンスがあります。

 そのことを理解せずに、親が大切にしてきた自宅を「House」として考えてしまうと、大きな反発を招くでしょう。「この家をどうするつもり?」などと言われてしまうかもしれません。もしも、家を「Home(=家族の思い出の場所)」として捉えたなら、違った言葉が出るはずです。

――「House」と「Home」の違い、たしかに大事ですね。具体的にはどのような言い方がいいのでしょうか。

萩原:「みんなで過ごした思い出の家だから、今後のことを話しておきたいね」などの伝え方がいいでしょう。

 大事なのは、「親の大事な家をないがしろにしていないこと」が伝わることです。皆さんのなかにもご自身で家を買ったという方がいらっしゃるかと思いますが、きっとその家には思い入れがありますよね? その家を「手放せ」と言われたら誰もが悲しい気持ちになるでしょう。それは親も同じです。

 ですから、あくまで家が大事なのは理解していることをしっかりと伝えてから、具体的な話し合いに持っていきましょう。

 家も大事ですが、それ以上に親の健康や命は大事です。そのための選択肢であることがストレートに伝われば、親も耳を傾けてくれるでしょう。

――ありがとうございます。たいへん勉強になりました。