与党自民、公明党と国民民主党の3党は「年収103万円の壁を引き上げる」ことで合意しました。しかし、「年収103万円の壁」をめぐって5つの“チグハグな現象”が起きています。国民生活は本当に良くなるのでしょうか?(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)
「年収103万円の壁」を巡るチグハグな動き
国民生活の未来はどうなる?
与党自民、公明党と国民民主党の3党は、「年収103万円の壁を2025年度税制改正の中で議論し引き上げる」ことで合意しました。これを受けて石破首相は本日(11月29日)の所信表明演説でも年収103万円の壁の引き上げを表明する見込みです。
これで先の衆議院議員選挙で躍進した国民民主党の公約実現が一歩進んだ形です。一方でこの年収の壁の引き上げを巡っては、利害が相反する陣営からの抵抗や反対の動きが出始めています。国民生活の未来はよくなるのでしょうか?
今起きていることをまとめてみたいと思います。
5年前に消費税が10%に増税されて以降、コロナ禍があり、2023年・24年に多くの都道府県で健康保険料率が引き上げられ、円安による物価上昇が起きています。多くの国民の実質的な手取り年収が減り、生活が苦しくなったという意見が多く寄せられています。
この状況で国民民主党が打ち出した政策が「年収の壁を103万円から178万円に引き上げる」というものです。これは年収の壁103万円が設定された1995年当時の最低賃金が611円だったことから、最低賃金が1.73倍の1055円に増えた現在で言えば、壁の高さは1.73倍の178万円であるべきだという考えです。