地方創生の予算が増えるのは地方にとってはよいことですが、政策がこのあたりからどうもちぐはぐになってきました。話がだんだんと大幅な減税と、大幅なばらまきへと変質してきたのです。

 シンプルに考えれば減税をするならば、減税によって消費が回復するまでの間、政府は支出も減らすべきです。おかしな話になってきました。

現象4
106万円の壁のハードルが高まる

 これは選挙前から言われてきたことですが、年収の壁というのは103万円の壁だけではなく、もっとたくさんあります。

 中でも103万円の壁よりも問題があるとされてきたのが社会保険料がかかることで手取りが鋭角的に減る106万円の壁です。

 大きな会社で働くパート労働者は年収が106万円を超えると社会保険に入らなければならなくなります。壁前後では年間で15万円の負担が増えて、手取り年収は崖のように減ります。

 2022年10月以前は従業員数501人以上の会社に限られていた壁条件が、徐々に中小企業に適用されるように改正され、今年の10月以降は従業員51人以上の中小企業のパート労働者も週20時間以上働く場合には大企業と同じように106万円で社会保険への加入が義務付けられました。政府はいずれこの51人という条件も、106万円という条件も撤廃したい意向です。

 ただしこの社会保険料の壁については実は壁ではないという意見もあります。というのも確かに壁を超えたとたんに手取り年収は15万円ほど減るのですが、65歳以降になると年金支給額が上がるのでその減少分は取り戻せるからです。

 とはいえ、「103万円の壁が撤廃されても106万円の壁、週20時間の壁がある以上は労働時間を増やせない」と考える労働者は少なくありません。

 ですから今回、政府が「103万円の壁を撤廃する」と決めたとしても、週20時間を超えたら社会保険料で手取りが減る状態が意識されることで、パート労働者の労働時間は増えないことが予測されるのです。