親族から言われた「心ない言葉」がトリガーに
ある日、Aさんの親族が、突然Aさんのお宅を訪ねて、「部屋が汚い」「だらしがない」などと心ない言葉をかけてきました。
親族が日頃からAさんのことを気にかけていたかというと、そうではありません。たまたま片づけに関するテレビ番組や動画、本などを見て片づけスイッチが入っていただけ。
Aさんは急に言われてしまい困ってしまいます。日頃の仕事のストレスに加え、さらなるストレスを抱えることになります。
そして「自分はおかしいのかな」「自分はちょっとダメなのかな」と不安になり、やがて自分を責めてしまいます。
気遣いの人が「気にしい」になってしまう
こんなふうに、Aさんのような気遣いさんが、周囲との人間関係でストレスを抱えてしまうと、自分に自信が持てなくなり、いつも人からの評価が気になる「気にしい」になってしまいます。まさしく「片づけの呪縛」です。
先ほどの「こんな部屋に入ってもらうの、嫌だと思うんですけど…」は、まさに相手の気持ちを先回りし、相手の顔色をうかがっている一言です。だから僕の胸は痛むのです。
ケーキや洋服が作れなくても、髪の毛をカットできなくても、自分はダメだと思わないのと同じく、片づけに対しても「罪悪感」とか「苦手意識」のようなものを、どうか捨ててほしいと心から願っています。できなくても決してダメじゃないんです。
そして先ほどのAさんの親族の方のように、片づけができない状況にある方を責めないでほしいのです。
やり方がわからない、時間がない。であれば僕たちに頼っていただければと思いますし、普段から話せる人がいれば、軽い感じで「実は片づけがあまり得意じゃなくて…」と悩みを共有していただければと思います。「私もそうだよ」とか「一緒に手伝うよ」と言ってもらえることもあるかもしれません。
片づけの第一歩は捨てること、といつもお伝えしていますが、捨てるのはモノだけではありません。ご自身の中にある「片づけの苦手意識」や「片づけができないことによる罪悪感」も最初に手放していただきたいのです。
1万軒以上のお宅を片づけて思うことは、自分も含め、誰もが片づけに対して同じような悩みを抱えているということです。みんな同じ。だから安心して、苦手意識や劣等感は捨ててください。少しずつ、できるようになっていけばいいのですから。
この連載でも、片づけの方法や考え方などを紹介していますので、何かみなさんのヒントになればと思ってます。そして、一人でも多くの方が「片づけの呪縛」から解放されることを願ってやみません。