「リーダーシップには唯一絶対の正解はない」
部下の指導を4型で考察するSL理論とは
秋津はどう接すればよかったのか。私がドラマふてほど(こう略すのがトレンドのようです)を見て気づいた、令和の職場問題を述べるために、まず、「シチュエーショナル・リーダーシップ理論」(Situational Leadership、以下SL理論)を説明しましょう。状況対応型リーダーシップとも呼ばれ、「リーダーシップには唯一絶対の正解はない」ことから、社内の状況やメンバーの課題に応じてマネジメントのスタイルを変える手法です。
SL理論では部下を4つのタイプに分け、それぞれに合った4タイプのリーダーシップがあるとしています。
まず、部下の4タイプですが、「新入社員」は、モチベーションは高いものの業務スキルは低い。次に、「2・3年目社員」は新入社員と比較するとモチベーションは低下し、業務スキルは上がっているものの十分とはいえません。なお、この時点での離職率は高く、厚生労働省の最新の調査結果では入社後3年目までの離職率は、新規高卒就職者が37.0%、新規大学卒就職者が32.3%となっています。
さらに進むと、モチベーションはそこそこあり、業務スキルは一通り身につけた「普通の社員」となります。そして、普通の社員の中から一定数が、高いモチベーションと業務スキルを備えた「できる社員」に到達します。
マトリクスにおける横軸の「指示型行動」とは、上司から部下に対して仕事のやり方を具体的かつ細かく示すことです。一方、縦軸の「支援型行動」とは、部下の主体的な提案や行動を引き出し、それに対してアドバイスやサポートすることを指します。
部下のタイプに合った4つのリーダーシップの型は次のとおりです(日本能率協会の資料から一部編集)。
【指示型】
意思決定はリーダーが行い、部下に具体的な指示命令を与え、仕事の達成までの進捗を細かく管理する。友好的な人間関係を築くことよりも仕事の達成度を高めるサポートを重視。
【コーチ型】
リーダーは指示型・教示型と同様に指示命令を与えるが、部下の意見やアイデアを引き出すために援助もする。リーダーの一方的な指示ではなく部下とのコミュニケーションを取りながら進める。リーダーは部下の仕事の達成度と部下との人間関係構築にも努める。
【支援型】
意思決定は部下が行い、リーダーは部下が目標を達成するまでのプロセスを援助する。リーダーは意思決定の責任を部下と分かち合う。
【委任型】
進捗状況の報告は受けるが、リーダーは意思決定と問題解決の責任を部下に任せる。
例えば、2・3年目社員は、往々にして会社と自身の方向性のギャップを認識し始めます。そこで、上司はある程度細かな指示型行動を継続しながら、支援型行動を強化することが、退職の防止にもつながります。
また、普通の社員に対しては、細かな指示的行動は避けて、より大きな単位での指示的行動を心がけるとともに指示型行動自体を減らしていきます。そして、会社に貢献してもらうのと同時に、個人のキャリアパスを支援するためのマネジメントも意識します。
できる社員に対しては、ゴールを共有すれば自然と達成してくれるので、指示的行動も支援的行動もそれほど必要ではなく、責任を部下に持たせることも出てきます。