芝居や映画を観た後は、それぞれが感想を言い合うのが我が家の恒例行事です。

 大将の批評はとても論理的で、父親の私も舌を巻くほどでした。作品についての感想は、「楽しかった」「おもしろかった」などという安易で簡単な表現はしません。なぜ自分はそう感じたのか、自分ならこうしてみたいなどと、かなり踏み込んだ意見をいって盛り上がります。

長兄・大将が弟に教えた
勉強しなければならない理由

 大将が中学2年生の時、私は妻と一緒に大将の学校の文化祭を観に行きました。大将が書いたシナリオを自分で演じるということでした。これは是非とも息子の初舞台を見ておかねばと思ったのです。私たちは、大将の邪魔をしないよう、講堂2階の隅のほうからそっと観ることにしました。

 大将がステージに出ると、周りから「キャーっ」と歓声が上がりました。どうやら大将は、学校でそこそこ人気があるのだとわかりました。

 中学生の文化祭ですから、驚くようなレベルの内容ではありませんでしたが、大将はしっかりやりきって満足そうでした。自分でシナリオを書き、演出して、充実感と達成感を味わったように見えました。

 兄弟の会話の中にも、長男らしいシッカリ者の大将の考え方を垣間見ることがありました。次男が小学校高学年の頃のことです。

「勉強ってしんどいな。どうして勉強しなくちゃいけないのかな」

 そういう弟に対し、長兄の大将が出した答えは、「将来の選択肢を増やすためや」そう、ハッキリと答えていました。

「この子は将来、演者になるかも」菅田将暉の父が驚いた、「福山雅治ライブ」を見た後の息子のひと言『スゴー家の人々~自叙伝的 子育て奮戦記~』(トランスワールドジャパン) 菅生 新(著)

 将来の選択肢。それは職業だったり、収入だったり、結婚だったりいろいろなことを端的に伝えています。テストで良い点を取るためだとか、受験のためだとかいうありきたりな答えではなく、自分の将来のためなのだと大将が気づいてくれている。そして何よりも、いつのまにか理解し合える兄弟関係を築いているということに、私は彼らに見えないところでガッツポーズをしました。

 大将は、まだ中学校3年生でしたが、自分の将来を論理的に考えられる子でした。成績も優秀でしたし、芸能界へ行かなければ大阪大学か早稲田大学か慶応大学へ進学していたことでしょう。