面接を受けるスーツ姿の男女写真はイメージです Photo:PIXTA

「僕らみたいな中小零細企業は、できる限り人を増やさずに、効率をよくして利益を上げていくことを目指すべきでしょう。なのに、なぜ、毎年新卒を採用するのか?」──100年続く老舗・木村石鹸の四代目が明かす理由が深かった。「人手不足」でも「欠員補充」でもない新卒採用の狙いとは?本稿は、木村祥一郎『くらし 気持ち ピカピカ ちいさな会社のおおらかな経営』(主婦の友社)の一部を抜粋・編集したものです。

中小零細企業なのになぜ毎年
新卒者を採用するのか?

 2022年4月入社予定の新卒者3名の懇親会を開いたときのことです。

 催しを企画し、進行してくれたのは、その4年前に入社した新卒メンバーでした。こういう企画を自分たちで用意して開催してくれたことが本当にうれしかった。新卒採用を続けてよかったと思った瞬間でした。

 あらためて、なぜ新卒採用を始めたか、それを続けているのかについて説明しようと思います。

 新卒採用は、一定期間継続的に行おうと覚悟を決めてスタートしました。人を増やすのは、それだけでリスクの高いことです。僕らみたいな中小零細企業は、できる限り人を増やさずに、効率をよくして利益を上げていくことを目指すべきでしょう。なのに、なぜ、毎年新卒を採用するのか?

 一般的な採用の目的は、「人手不足」か「欠員補充」といったところでしょうが、木村石鹸の新卒採用においては違います。木村石鹸では、今の事業や組織体を前提として、それを発展させる、あるいは、それを維持するための採用は行っていません。

 片や、今すぐに必要じゃないかもしれないけれど、その人が入ることで、何か大きな変化が起きるかも、何か新しいことが生まれるかもといった「期待感」を込めた採用もあります。言ってみれば「投資」です。木村石鹸の新卒採用はこちらです。

 この採用は、今組織にいる人からすると、人も足りているし、何かやってもらいたいことがあるわけでもないし、人が余るだけじゃないかと、思われるかもしれません。既存組織にとって、その人は、いったい何ができるのかが「よくわからない人」だから。

新卒より効率的な即戦力を
中途採用しない理由

 その「よくわからない人」の最たるものが、新卒です。まだ、何者でもなく、他の企業での経験や実績がないから未知数で、本当によくわからない存在。

 でも、まっさらな状態だからこそ、僕はむしろ可能性があるんじゃないかとも思っています。既存組織のメンバーにとっても、バリバリの経験者の「よくわからない人」を採用するよりは、新卒の「よくわからない人」の方が対応しやすいのではないかと思うのです。