ここで、ちょっとしたウンチクをご紹介しましょう。コメダHDではFC加盟店舗が扱うコーヒーやパンは、コメダHDが設備投資を行う自社工場で製造し、各FC加盟店舗へ販売しています。このFC加盟店舗へ販売した売上高が、売上原価の66%を占めています。このことから、コメダHDは珈琲店舗経営というよりも、食品製造・卸業であり、実際に東京証券取引所の業種分類では「卸売業」となっています。

 最後に、営業利益を見てみましょう。カフェや喫茶店における営業利益率は、一般的には10%が合格ラインと言われていて、実際には5~10%が多いそうです。

 サンマルクHDの営業利益率は「4%」です。一方、コメダHDは「20%」と突出して高いことが分かります。この理由も先述した通り、コメダはFC主体なので店舗運営にかかる人件費や光熱費などがコメダ側の費用負担にならないからです。

カフェチェーン経営の枠を超え
卸売業の顔を持つコメダHD

 コメダHDは、食品製造・卸業としての顔が強く、FCビジネスモデルで高い利益率を実現しています。「顧客」であるFC店舗が増えれば増えるほど、コメダHDの売上高が増える一方、店舗人件費や賃借料などの費用は増えずに利益が上がる仕組みが出来上がっているのです。

 ただ、FCビジネスもメリットばかりではありません。全国一律で商品やサービスの質を保つためには、運営側の多大な努力が必要です。コメダの場合、定期的にSNSで話題になるのも、好きなカフェランキングで上位になるのも、独自のメニュー開発や本部によるサービスの指導といった企業努力の賜物であることが考えらえます。

 一方、サンマルクHDは、コロナ空け以降の回復施策によって、売上高の増加および原価率の上昇がありました。加えて、コストコントロールや不採算店舗を閉店することで、営業利益率も上げようとしています。25年3月期は25~35店舗の新規出店と、25~30店舗の退店を予定しており、これで店舗の見直しはほぼ完了するとのこと。業績および財務内容の改善が見込まれています。

 コメダHDとサンマルクHDの比較から、カフェ・レストラン経営といっても、FCか直営店か、ビジネスモデルの違いにより財務も大きく異なることが分かりました。

 PLの基本的なポイントとして、費用のうち、どの費用が大きく占めているのか。その費用を削減していくのは可能なのか。逆に、固定費を極力増やさずに売上高を上げられる可能性はあるのか――。などと想像しながら考える事が重要です。