また、中国との関係についても懸念がある。特に観光ビザの取得が難しく、書類提出や質問内容が厳しいことが理由で観光客が減少している。中国便の収益性は高いが、完全な回復には時間がかかるとみられていた。

 しかし今月、政府は中国人が日本を訪れる際に求めるビザの発給要件を緩和する調整に入ったと報じられ、中国人の個人旅行客が更に増える可能性が高まっている。これが航空業界にどんな影響を及ぼすのか、注視しておく必要がある。

グランドスタッフは子会社採用
高給のパイロットは「別世界」

 航空業界への就職を考える上で、業界の構造について理解することが重要だ。

 大手のフルサービスキャリアに加え、LCC(格安航空会社)や中堅航空会社、貨物専門の航空会社が存在し、それぞれ異なる業務を担当している。

 また総合職や企画職、グランドスタッフ、整備士、パイロットなど多様な職種が存在している。航空以外の事業についても、グループ会社や本社勤務で展開されており、これらの職種が業界の構造を形成している。

 グランドスタッフは、ほぼ航空会社の子会社での採用となっている。以前は航空会社本体(JALなら日本航空、ANAなら全日本空輸)が「特定地上職」として採用し、勤務地も東京国際空港(羽田)や成田国際空港など会社が指定していた。

 しかし現在では、ANAなら「ANAエアポートサービス」、JALなら「JALスカイ」などの子会社での採用が基本だ。子会社から本体へ出向することはあるが、子会社から本体への転籍は難しいのが現状だ。

 キャリアプランを考える上では、できれば本体に直接入社することが就職活動では理想とされているが、中には、いったんグランドスタッフとして入社後、通常の転職プロセスで本体への中途採用に応募するケースもある。そのため、グランドスタッフの人手不足を招く要因の一つとなっている。

 パイロットについては、「運航乗務職」という専門職で採用される。日本では自社養成制度が主流で、文系出身の学生でもパイロットになれる。

 これが、アメリカなどの「自己負担でパイロットスクールに通う」仕組みとの大きな違いである。

 養成期間で視力や能力の基準を満たさなかった場合でも、総合職への転向はできる。

 パイロットは「給与も役員クラスであり、専門性の高い職種であるため、他の職種とは異なる『別世界』といえる」(鳥海氏)。