「人生を一変させる劇薬」とも言われるアドラー心理学をわかりやすく解説し、ついに国内300万部を突破した『嫌われる勇気』。「課題の分離」「トラウマの否定」「承認欲求の否定」などの教えは、多くの読者に衝撃を与え、対人関係や人生観に大きな影響を及ぼしています。
今回は、紀伊國屋書店新宿本店で開催された「『嫌われる勇気』国内300万部突破記念トークイベント」より、本書の著者である岸見一郎氏と古賀史健氏が、読者の皆様から寄せられた様々な「人生の悩み」に回答したQ&Aコーナーの模様をお届けします。(構成/ダイヤモンド社コンテンツビジネス部)
人間は「新着情報」に弱い
Q. 時間さえあればSNSを見てしまうのですが、そもそも見ない方がよいのでしょうか。「SNSとの上手な付き合い方」があれば教えてください。(20代・女性)
古賀史健 僕にとっても、「SNSを断つ」というのはなかなか難しいです。
なぜSNSに中毒性があるかというと、「タイムラインが常に動いている」という要因が大きいのではないかと僕は考えています。更新のスワイプをするとすぐ新しい情報が出てきますが、人間というのは、新着情報があるとどうしても見たくなってしまうものです。
テレビでよくある「街を散歩しながらおしゃべりする番組」が成り立っているのも、おそらく同じ理由だと思います。つまり、特に面白いトークをしていなくても、絶えず景色が動いて「新しい情報」が入ってくるからこそ、視聴者は興味を惹かれるのです。同じ内容のトークをスタジオでしているだけだったら、すぐに飽きてしまうのではないでしょうか。
SNSも、ひとつひとつの投稿はさほど面白くなくても、タイムラインが常に動いていて、毎秒のように新着情報が表示されるから中毒的に見てしまう。となると、「更新のスワイプをしない」というのが、現実的な対応策かもしれません。
「投稿への反応がない」という経験に慣れる
岸見一郎 対人関係というのは、放っておくと依存関係になりやすいものですが、SNSはまさに「相互依存的な対人関係」が営まれている場です。
自分がSNSに投稿をすると、どのくらい読まれたか、誰からどんな反応が来ているか、といったことが必ず気になります。そして、仕事中であっても自分のスマホを開いて、つい見てしまうのです。
なので、古賀さんのおっしゃる通り、意識的に遠ざかるための何らかのアクションが必要だと思います。
私の場合、書きたいことがあるときは、ユーザーの反応が比較的薄いSNSを選んで投稿しています。そうすると、たくさんの人に読まれているかが気にならなくなり、承認欲求から自然と逃れられるようになります。
つまり、“自分の考えを書いたけれども、反応がほとんどない”という経験を重ねていくのが、ある種のトレーニングになるのです。そういうことを試してみるのも、一案としていかがでしょうか。
(本稿は、『嫌われる勇気』国内300万部突破記念イベントのダイジェスト記事です)