自分は将来どうなるだろう……。そんな不安を持つ人は少なくないのではないだろうか。「いつまで第一線でいられるか」「いつまで他人と競えばいいのか」「いまいる友達は60歳になっても友達か」「気力体力はどうなるか」「お金は?」「いまのうちにやるべきことは?」など疑問がつきない。そこで本連載では、2025年に60歳を迎える奥田民生の10年ぶりの本『59-60 奥田民生の仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル』の中から、民生流の「心の持ち方、生きるヒント」を紹介する。「力まず自然体でカッコいい大人」代表の奥田民生は、これまでどのように考え、どのように働き、どのように周りとの関係を築いてきたのか。その言葉を見ていこう。(構成/ダイヤモンド社・石塚理恵子)

奥田民生と井上陽水はどのようにして出会ったか?『雪が降る町』という曲の話と奥田民生が「友達は上下に持ったほうがいい」という理由
Photo by Takahiro Otsuji

もともとは人見知り

 仕事柄、若い人と知り合う機会は多い。

 一緒に出たフェスで知り合ったり、曲を頼まれたり。

 こういう「仕事きっかけ」で仲良くなったり友達になることは割とあって、そういうときは年長者だからか多少なりともリスペクトや関心(ありがたいことだ)を持ってくれていることも多いから友達になりやすい。

 でも自分からアプローチして、若い人と友達になることは俺の場合あまりない。

 なぜなら得意ではないからだ。

井上陽水との出会いの話

 でも陽水(井上陽水)さんは違った。

 陽水さんは俺が27歳のとき、ユニコーンの『雪が降る町』を聴いて感想を手紙に書いて送ってくれた。

 それがきっかけで友達になった。

 陽水さんは俺の立場からは「友達」だなんておおっぴらには言えない大御所だけど、関係は「友達」だと思っている。

 陽水さんも俺を音楽的なただの後輩だとは思っていないような気がする。

すごい人ほど自分の方から声をかける

 なにが言いたいかというと、すごい先輩ほど自分から後輩に声をかけて友達になってくれるということだ。

 そのおかげで俺は人生が楽しくなっている。

 歳を重ねるとどうしてもラクな方に流れるから、つい同じくらいの歳のやつとばかりつるむことが多いけど、一回りくらい歳の離れた友達がいると違った刺激をもらえてやっぱり楽しい。

友達は上下に持つのがいい

 それは年上も年下も同じで、だから俺も若いやつに自分から声をかければいいのだけれど、残念ながらそれは苦手で、でもたとえば「フジファブリック」の山内総一郎は友達だ。

 総ちゃんは一回り以上年下だけど、同じ事務所であいつもギターを弾いていて、それがきっかけで友達になった。

 俺は「年下然」としているやつとはなかなか友達になりにくいけど、総ちゃんは年上ばかりの中にいてもまったく違和感がない人で、気軽にギターの質問をしてきたり、俺も総ちゃんに質問したりと、気兼ねなく話せる貴重な年下の友達だ。

できれば年長者から声をかけたい

 友達は同世代だけじゃなくて上にも下にも持つと人生は楽しい。

 ただ若い人は自分から年長者には声をかけにくいものだから、そういうときは陽水さんみたいにできれば年長者から声をかけたい。

 でも俺のような人見知り出身で声をかけられない大人を見たら、若手からも声をかけてみてほしい。

 その代わり年長者は「話しかけるなよ」みたいな顔で眉間にシワを寄せてタバコなんか吸ってはいけない。

 そんな顔をしていたら誰も声などかけてくれない。

年長者はスキを見せよ

 50代にもなると真顔で息を吸ってるだけでパワハラになってしまうから、そこに大人は気をつけながら、俺らはなるべく笑顔で話しかけやすい空気を作って「話しかけても大丈夫ですよ」という大人のスキを相手に見せる。

 そんな感じで若い人とも友達になればいい。

(本稿は奥田民生『59-60 奥田民生の仕事/友達/遊びと金/健康/メンタル』からの抜粋記事です。)