実際、伝統的に日本の企業内研修ではソフトスキルは積極的に取り扱われていません。たまに職場管理や部下管理がとても上手な日本人がいますが、それは残念ながら例外といってもいいぐらいまれなことです。

 そうした人は、運よくすぐれたマネージャーのもとで働き、見習うことができた経験があるか、もともとそうした性格や資質を持っていたか、あるいは自分でマネジメントスキルを向上させる道を探ったのかもしれません。

DXを導入するために
まずはマネージャーを育成せよ

 偶然や運、個人の自主的な努力でしか、すぐれたマネージャーが生まれないとしたら、今日の厳しい競争時代には対応できません。ましてや、DX時代に必要な組織体制を構築できるはずもありません。

 日本の多くの企業、そして職場はいま、危機的といえるほどの難しい状況に置かれています。加えて、これからDXを導入するためにはさらに大きな変革が求められるにもかかわらず、そのための準備ができていない職場が多いのが現状です。働き方に関する様々な問題が明らかになっている日本では、「マイナスの立場からのスタート」でこの局面を迎えています。

 日本の労働生産性はアメリカなどの先進国と比べてかなり低いことが知られています。日本人は世界の中でエンゲージメント(会社に対する「愛着心」や仕事に対する「思い入れ」)のレベルが格段に低いという世論調査の結果も出ています。

 従業員の勤労意識も変化は激しく、従来はうまくいっていた部下指導などのやり方が通用しにくくなったと感じているマネージャーも少なくありません。

 したがって、マネージャーがすぐれたソフトスキルを身につけることは、企業にとっても生き残りのための不可欠な条件であり、部下管理のスキルを磨くのはきわめて重大な課題であるといっても過言ではありません。

 すぐれたソフトスキルを身につければ、様々なマネジメントの課題を乗り越えることができるようになるでしょう。いまのところ職場の管理が順調にいっていると感じているマネージャーにとっても、ソフトスキルを強化するのは将来に向けてのよい布石になるはずです。