「仕事が遅い部下がいてイライラする」「不本意な異動を命じられた」「かつての部下が上司になってしまった」――経営者、管理職、チームリーダー、アルバイトのバイトリーダーまで、組織を動かす立場の人間は、悩みが尽きない……。そんなときこそ頭がいい人は、「歴史」に解決策を求める。【人】【モノ】【お金】【情報】【目標】【健康】とテーマ別で、歴史上の人物の言葉をベースに、わかりやすく現代ビジネスの諸問題を解決する話題の書『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、伊達政宗、島津斉彬など、歴史上の人物26人の「成功と失敗の本質」を説く。「基本ストイックだが、酒だけはやめられなかった……」(上杉謙信)といったリアルな人間性にも迫りつつ、マネジメントに絶対活きる「歴史の教訓」を学ぶ。
※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。
削減しすぎは危険
コストカットが会社の成長を止めるワケ
業績を改善するには「売上高を増やす」「コストを減らす」、もしくはその両方を実践することです。
しかし、売上高は販売先の事情もあるため、すぐには増やせません。一方、コストを減らすのは自分たち次第ですから、効果を上げやすいです。
このため、利益を底上げしようと、コスト減らしに注力しがちでもあります。しかし、コスト削減で利益を上げることには限界があるため、商品や営業の収益性を改善して売上高を増やすとり組みも欠かせません。
また、コスト削減が目的化して、利益が生まれても有効に使われないと、将来に向けた先行投資がおろそかになってしまい、結局は先細りになりかねません。
「分度」で経営が変わる
江戸の知恵を現代に活かす経営術
では、どうしたらいいのか。まさに二宮尊徳が唱えた「分度」「勤勉」「推譲」「至誠」で構成される「報徳仕法」が活きてくるのです。
尊徳が教えた「分度」は、あらかじめ定めた収入の範囲内に支出を抑えることとありました。収入が100石なら支出は50石に抑えるということです。
現代のビジネスでいうと、保守的な業績見込みを立て、その範囲内にコストが収まるように計画していきます。
売り上げ目標が高いほど危険!
利益を守る予算計画の新ルール
野心的な売り上げ目標を立てることがあるかもしれません。
しかし、売り上げ目標は高めに設定されることがほとんどのため、これを基準とすると、総じてコストも高めになります。
予算を立てるときには、現状の延長線上で確度が高い「売り上げ見込み」をもとに計画を立てるほうが利益を確保しやすくなるのです。
売り上げ目標を超える力
尊徳の「勤勉」がビジネスに示す教え
売上高について、尊徳が教えた「勤勉」では、定めた収入以上の収入を生むように頑張るとあります。
現状の延長線上に見込める増収要素は確実に実現しつつ、さらに営業面や商品面の改善により、売り上げ見込み以上の目標売上高を達成することが求められます。
未開拓市場に挑め!
環境対応商品と営業体制の進化が未来を切り開く
具体的には、次のようなとり組みを進めることになります。
商品面であれば、たとえば近年の環境意識の高まりに対応して、CO2の排出量が少ない原材料をベースとする環境対応商品を開発するなど、時代の変化に合わせた商品開発が考えられます。
また営業面であれば、これまで営業ができていなかった業界や海外を含むエリアなどを開拓する新規体制を構築して、ニーズを確認していくことなどが考えらえます。
設備か人材か?
企業を伸ばすための「利益の先行投資」
利益の使い方について、「推譲」では地域や子どもたちの将来に使うこととあります。
将来の業績を向上させるには、利益を先行投資する必要があります。先行投資には、生産設備への投資もあれば、人材獲得への投資もあります。
コンサルティングのなかでも、収益改善に向けてはコスト削減だけでは、やはり限界を感じます。
江戸時代の哲学で救われた
苦しい経営を打破する「報徳仕法」の力
正直に言うと、私もかつては収益改善に向けたアドバイスとしてコスト削減に片寄っていた時期がありました。しかし、コスト削減を進めるだけでは、一時的には収益が改善されるものの、将来的にまた悪化することが多いのです。
なぜなら、コスト削減の過程で優秀な人材や拠点設備が失われ、新たな収益の機会を損失してしまうからです。
そのような苦しい状況を経験した後、二宮尊徳の「報徳仕法」を知る機会があり、霧が晴れたように感じました。
コスト削減だけでは限界…
「勤勉」と「推譲」が収益を伸ばす理由
コストを抑制する「分度」の視点はあったのですが、収益をあげるための「勤勉」や、将来に向けて投資する「推譲」の視点が不足していたことに気づいたのです。
それからは、コスト抑制だけではなく、増収や先行投資による成長も意識した収益改善を目指すようになりました。
コストを抑制しつつも、営業面・商品面のとり組みによる増収と、先行投資が収益改善には欠かせません。
収益立て直しのポイント
2.営業面・商品面のチャレンジにより売り上げ目標を実現する
3.将来の増収に向けた先行投資に利益を使う
※本稿は『リーダーは日本史に学べ』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。