お父さんから精算課税制度で600万の贈与を受け、お母さんから精算課税制度で400万の贈与を受けました。この場合、年間110万円の非課税枠は、基礎控除額は贈与額で按分されます。つまり6対4の比率で配分され、110万円を1000万円で割って600万と400万円に振り分けます。具体的に言うと、お父さんには非課税枠が66万円使えて、お母さんには44万円使えます。精算課税を複数人から受けた場合に使える基礎控除額は110万円のままです。
これなら大丈夫!
では、精算課税と暦年課税の併用はどうでしょう。お父さんからは精算課税贈与、お母さんからは暦年課税贈与を受けた場合、110万×2で220万円まで非課税になります。
これまでできなかった合計220万円まで非課税で贈与を受けることが2024年から可能になっています。ただし、暦年課税贈与については7年目加算のルールに注意が必要です。お母さんから受ける贈与については、7年をしっかり生きていただかなければ非課税にできません。このように、110万の非課税枠を2つ使うことも2024年から可能です。
これまでは暦年課税制度という1つの枠の中で贈与の方法を考える必要がありましたが、今後は精算課税制度を使いつつ、暦年課税制度も使っていくことで、贈与の選択の幅が増えました。工夫の余地が増えたと言えますが、悪く言うと複雑になりました。考えることが増えていますので、これを機に一緒に考えてください。
そして、相続時精算課税制度を使いたい方は税務署に申告する必要があります。これは贈与を受けた次の年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告をしていただく必要があります。その場合、精算課税を使う場合は相続時精算課税選択届出書という書類を必ず提出しなければいけません。提出し忘れると大変なことになるので注意してください。
2024年以降、例えば110万円の贈与を受けて相続時精算課税制度を使い、その分、非課税枠を使いたい方については、贈与税の申告は必要なく、相続時精算課税選択届出書の提出だけで良いです。
この書類の作成自体は難しくありません。名前を書いたり、誰から贈与を受けるかを書いて、必要書類を確認してください。戸籍謄本などが必要ですので注意してください。
年末年始が近づいてきました。親族で顔を合わせる機会がある人も多いかと思います。相続や贈与のことで家族と話し合う際、ぜひ参考にしてください。
(本原稿は『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』の一部抜粋・追加加筆を行ったものです)