異例の重版、アマゾンでも100位内に

2万8600円の「鈍器本」がアマゾン100位内の衝撃!SNSに絶賛の声「すごい辞典」「国書刊行会ヤバイ」神山重彦著『物語要素事典』(国書刊行会) Photo by Tatsunori Tokushige

 神山さんは1986年から事典づくりに取り掛かり、1998年には物語要素事典をウェブで無料公開した。国書刊行会の編集者がこのウェブ版に目を留め、書籍化に動いたのは今から10年前だった。

 ウェブの内容を大幅に増補して、書籍化することになり、神山さんの増補が終わったのは2016年6月。その後は書籍全体の構成やデザインの検討などをへて、2024年にやっと完成を見た。その間、神山さんに最初に声をかけた編集者は既に退社。その後を継いだのが国書刊行会の河野さん(※本人の希望により名字のみ)だ。

 事典の内容やその出来栄えには自信はあったという河野さんだが、一方で不安もあったという。

「本そのものの途方もなさは当然わかっていたのですが、やはり大著と言われる本がよく売れるのは昨今あまりないことです。重要な本であるのは間違いないけれど、多くは売れないということも覚悟しなければいけないとは思っていました」

2万8600円の「鈍器本」がアマゾン100位内の衝撃!SNSに絶賛の声「すごい辞典」「国書刊行会ヤバイ」神山重彦著『物語要素事典』(国書刊行会) Photo by Tatsunori Tokushige

 しかし、その懸念は嬉しい形で裏切られる。物語要素事典のページ数や判型などの情報が国書刊行会のサイトに掲載されると、SNS上で「すごい辞典が出るっぽい」「国書刊行会ヤバイ」など出版前から好事家の間で話題となった。

 そして10月28日の発売日、国書刊行会のアカウントがXで告知すると、2000回以上リポストされ、4000以上の「いいね」がつくなど一気に拡散された。

「初版初刷も当社としてはかなり多めに製造したのですが、発売されると瞬く間に売り切れてしまいました」(河野さん)といい、発売から1週間ほどで異例の重版が決定した。ネット通販大手のアマゾンでも売れ行きは好調で、約3万円もする高価な本ながら、書籍全体ランキングで100位以内となり、出版界に驚きが広がった。