これらの話を聞いて「糖尿病が治らないのであれば、生活改善をがんばっても意味がないのでは?」と思われる方がいるかもしれません。

 しかし、糖尿病を悪化させてしまうと、失明や腎機能の低下などのさまざまな合併症のリスクが高まることが分かっています。研究でも「治療を受けていないHbA1c(編集部注/糖化ヘモグロビンがどのくらいの割合で存在しているかをパーセントで表したもの)8%以上の糖尿病患者はそうでない人と比べて、腎機能障害を有する割合が4年後に8.15倍に上昇する」という報告があります。

 そこで、2021年にアメリカ糖尿病学会を中心とする専門家グループは、糖尿病の合併症のリスクを大幅に低下させる基準として「(1)薬物療法を行っていない状態で、(2)HbA1c 6.5%未満が、(3)3カ月以上持続している状態」を「寛解」と定義しました。

 研究によれば、「寛解に該当する患者は年に1、2回の検査と通院のみの経過観察で問題がない」と言われています。いかがでしょうか?

 確かに、糖尿病は治らない病気ですが、年に1、2回の通院であれば、それほどの負担にはならないのではないでしょうか?

 まずは糖尿病とはどのような病気なのかについてくわしく見ていきましょう。

高血糖状態が続くと
血管や臓器へダメージ

Q「糖尿病とはどんな病気でしょうか?」

A「膵臓から分泌されるインスリンの量が減ったり、働きが弱くなったりして、血糖値が上がる病気です。これが原因で全身の血管や臓器にダメージを与えてしまいます」

 みなさんは糖尿病になると「血糖値が上がる」ことをご存じだと思います。しかし、「なぜ体内で血糖が増えると良くないのか」についてはくわしく知らない方も多いのではないでしょうか?

 糖尿病はどのようなメカニズムで発症するのかについて解説したいと思います。

 私たちは食事をする中でさまざまな栄養素を摂取します。その中でも炭水化物などの糖分を含む食べ物(糖質)を摂取すると、体内の消化酵素の働きによってブドウ糖(グルコース)へと分解されます。