このブドウ糖は小腸を通して血液中に吸収され、肝臓や筋肉などの全身の細胞に運ばれていきます。そして、筋肉や肝臓に運ばれたブドウ糖は、私たちが活動するためのエネルギーとして使われ、一部はエネルギー不足に備えてグリコーゲン(エネルギー源)として蓄えられます。

 このサイクルを「糖代謝」(図1)と言います。ちなみに、糖尿病はこの糖代謝の異常が原因で発症します。糖代謝が体内でスムーズに行われるためには、膵臓から分泌されるインスリンをはじめとする各種ホルモンが適切に働いて血糖をコントロールする必要があります。

図1:糖代謝同書より転載 拡大画像表示

 しかし、何らかの原因でインスリンの分泌量が減ったり、その働きが悪くなったりすると、血液中にブドウ糖があふれた高血糖状態が続き、ブドウ糖が血管の内側の細胞に入り込んでしまうようになります。すると、細胞を傷つける活性酸素が増えてしまい、血管にダメージを与え、やがて動脈硬化へと進行してしまうのです。

 また、血液中にあふれたブドウ糖は血管の内側の細胞と結び付き、「糖化」という現象を起こすこともあります。すると、細胞が焦げ付いたような状態(AGEs)が起こり、各臓器が次第に正常に働かなくなってしまいます。この糖化の一環で腎臓や肝臓などの働きが悪くなり、重篤な病気になることがあります。

 糖尿病は糖代謝の異常によって血糖値が上がり、全身の血管や臓器にダメージを与えてしまう恐ろしい病気だということがお分かりいただけたと思います。

おおむね「自覚症状がない」糖尿病
だが前兆となるサインはある

Q「糖尿病の初期症状について教えてください」

A「頻尿や喉の渇きなどの症状があります」

 私のクリニックには、健康診断で異常を指摘された方が数多く訪れます。再検査の結果、糖尿病であることを伝えることがありますが、その際多くの方が「自覚症状がない」と言います。