激しいところもあれば繊細さも
フェアレディZの二面性

 そんな大倉にとって、乗る人を選ぶ車と言われ、ともにスターとして人の視線を釘付けにする宿命を背負っているZという車はどう映ったのか。大倉に問うてみた。

「やはりレディですね。いろいろな顔を持っている。激しいところもあれば、繊細なところも……」

「これ、ヤバい」逆境のスターピアニストが惚れ込む“唯一無二”のスポーツカーとは【試乗記】Zのエンブレム。1969年登場の初代モデルから、この「Z」の文字は自動車ファンの間では特別な意味を持つ

 今回、大倉が試乗したのは今日では乗り手がめっきり減ったMT(ミッション)車だ。ともすればMT車でスポーツカーと言えば、ただただ走りを追求する車と捉えられがちだが、そこは「令和のスポーツカー」。その装備は今という時代と社会を反映したものだ。

「車間距離を自動で保ってくれる装備がついています」

 横浜から大阪までZとのランデブーを終えた大倉が、やや興奮気味で話す。これはZに装備されている「インテリジェント クルーズコントロール」のことを指す。

 この機能はドライバーが設定した速度を上限とし、前を走る車との車間を保つようにして走らせるというもの。とくに長距離を走る際、ドライバーの負担は大きく軽減されよう。

 このような“レディ”らしい優しい装備もさることながら、やはりZ。激しさもまたひとしおだ。

「雨の日だったのですが、(アクセルを)踏み込むと、これヤバい、怖いと思うくらい、すごかったですね」

 車好き、運転巧者で鳴る大倉でさえ、こう言うのも無理はない。今回、元プロのレーシングドライバーが言う。

「最新型のZは、街中で、それほど踏み込まなくても軽く走れる。ちょっとアクセルに足を乗せる程度で十分走る。それがZ。本気で踏み込むにはドライバーに覚悟がいる。扱いが難しい。気難しいガールフレンドを相手にしているようなイメージだ」