これからのグローバル競争社会で活躍できる子どもを育てるには、失敗を恐れず、何事にもチャレンジできる「たくましさの育成」に目を向けることが大切です。
たくましさは生まれ持った資質と思われがちですが、実際にはスポーツや音楽などの競争に参加し、目標に向かって本気で研鑽(けんさん)を重ねることで、育成することができるのです。
グローバル化は日本を「国際競争」に巻き込みます。ソフトバンク、ファーストリテイリング、ホンダなどグローバルに展開している企業は外国人採用を広げています。優秀な人材であれば国籍や人種に関わりなく採用するという日本企業は増えており、すでに優秀な外国人との競争は始まっているのです。
これからの子育てで欠かせない「たくましさの育成」なのですが、集団の和を重視する現在の日本には逆行する風潮があります。
例えば、運動会の徒競走でみんな並んで一緒にゴール、中間や期末など定期テストの廃止、生徒に成績順位をつけないなど…。本来そこに自然とあるはずの競争を、人工的に取り除いてしまっているケースも見かけます。
子どもから競争を奪ってしまうと「目標に向かって頑張る」という自主的な意欲が育ちません。また成功体験を通して「自信」を大きくすることができません。何よりも失敗や敗北をバネに飛躍する「たくましい精神」を鍛えるチャンスを失ってしまうのです。
スポーツで健全な競争心を養う米国
私は日本で生まれ育ちましたが、米国に移住して米国家庭との違いに驚きました。
多くの米国人家庭は、子どもが5~6歳になると「競技スポーツ」に参加させます。
日本では子どものスポーツといえば体力作り目的の練習が中心ですが、米国では「スポーツ参加=競争参加」です。初心者であっても試合に出して真剣勝負を経験させます。細かい技能は二の次。まずは実践を通して「本気で競い合う楽しさ」を味わわせるのです。
「小さな子どもを競争させるなんてかわいそう!」と思うかもしれません。しかし市場原理を重視する競争社会・米国で生き抜くには、子どもの頃からたくさんの競争を経験して「競争慣れ」しておくことが必要なのです。
子どもを競技スポーツに参加させる目的は、相手を打ち負かす優越意識を植えつけることではありません。目標に向かって努力することの大切さを教えるためです。競技スポーツは「健全な競争心」を育てる最高のツールなのです。
勝者となってトロフィーを手にする成功体験は、さらに高い目標に向かってチャレンジする向上心を育ててくれます。また敗者になったときの悔しい思いは、敗北をバネに飛躍する力や勝つために何が必要なのかを考える力など、勝利以上に多くのことを教えてくれます。
敗北や失敗は人生で誰もが必ず経験するプロセスであり、特別なことではありません。子どもの頃に競争経験が少ないと、失敗を過剰に恐れて新しいチャレンジができない、消極的な態度が形成されてしまう危険性があります。
また本番に弱く、緊張して実力を発揮できないという子どもは、競争経験が少ないのです。いくら練習をたくさんしても、実戦を経験していないと萎縮する場面が多くなります。
競争経験を積むことで、日頃の練習でも実戦をイメージできるようになり、それがプレッシャーのかかる場面で自分の力を100%発揮できる力につながっていきます。