本当の幸せは競争には存在しない

 ある日、50代後半で会社を早期退職した友人がフィリピンにボランティアに行き、人生観が変わった話をしてくれました。

 フィリピンでは本当に貧しい貧民街があり、みな服もボロボロ、食べるものも満足になく、家には壁すらないというような状況。しかし、そこで出会った人はみな口をそろえて「私は幸せだ」と言うというのです。

・日本人とは比較にならないくらい貧しい環境で「幸せ」と言い切る彼ら。
・一方、会社員としてそこそこの給与をもらいながらも、日々の仕事のプレッシャーで「幸せ」だと感じられない自分。「この違いは何だ?」と考えたとき、次のことに気づいたといいます。

「私の幸せは、他人との比較の中での幸せであり、彼らの幸せは、自分の中から湧き出てくる幸せなのだ」と。

 企業で求められる成長は、目標に対して結果を出すためにスキルや知識を付けていくこと。そこにアウトプットや評価が伴う以上、その成長の向かう方向というのは、上司や同僚など自分以外の他者が求めるものになりがちです。こうして無意識のうちに、他人の評価軸に合わせて生きてしまっていることにつながっていくのです。

 やはり、本当の幸せを得るためには、他人に評価されるためではなく、自分のために自分で進むべき道を決め、自分自身でそれを評価する必要があります。

 逆に言えば、他人軸ではなく自分軸で自分の幸せを定義することができれば、たとえ会社を退職して収入が減ってしまったとしても、会社でいい評価を得られなかったとしても、フィリピンの人たちと同じように「幸せだ」と感じられることでしょう。

 たとえば、次のようなつぶやきを見て、皆さんはどう思われますか。

・退職することで、在職中の元部下たちより収入が減ってしまったじゃないか。
・接待で行った懐石料理、美味かったな。定年じゃなきゃ、また食べられたのにな。
・あいつが俺の手柄を横取りしやがった。俺の方が評価されてよかったはずだった。

 元部下との比較、退職前と今との比較、他人との評価の競争など、正直、聞いていて良い気分になるものではありませんよね。ですが、これらが競争社会で知らず知らずのうちに私たちが求めている幸せなのです。

 しかし、上記のシチュエーションに対して、次のように考えてみることもできます。